結論――種としての完全絶滅は未確定だが、人類文明の崩壊は現実的だった
キメラアントを放置すれば、人類が一人残らず消えたのか。
そこまでは確定していない。
メルエムはコムギとの交流を通じて、人間の中にも生かす価値のある者がいると考えるようになる。
ネテロへも、戦わず従うなら生存を認める趣旨の提案をする。
後期のメルエムは、全人類の即時絶滅だけを目的にしていない。
しかし、それは安全を意味しない。
メルエムが勝利した場合、
- 既存国家は解体される
- 人口は選別される
- 多数の人間が食料・兵士・素材として扱われる
- 生存者も王の管理下へ置かれる
- 人間の自己決定権は失われる
可能性が高い。
したがって、正確な表現は、
人類という種が確実に絶滅する案件
ではなく、
人類文明と現在の人口構造が維持できず、長期的には種の存続まで危うくなる世界征服案件
である。
東ゴルトーの「選別」は、500万人を対象にした虐殺計画
東ゴルトーでは、国民大会を利用して約500万人を宮殿周辺へ集める。
表向きは政治行事だが、真の目的は「選別」である。
強制的にオーラを開かせ、生き残った者を兵士やキメラアント化の素材にする。
想定生存率は約1%。
計算すると、
対象者 5,000,000人
× 生存率 1%
= 50,000人の生存者
逆に、死亡予定者は、
5,000,000人
× 99%
= 4,950,000人
である。
約495万人を犠牲にして、5万人の念能力者軍団を作る。
これが成功すれば、王と護衛軍だけを倒せば終わる段階を超える。
5万人の念能力者は、世界征服用の軍隊になる
念能力者一人でも、一般兵や警察へ大きな脅威になる。
銃弾へ耐える者、姿を隠す者、他人を操作する者、遠距離攻撃をする者、情報を読む者がいる。
そのような能力者を5万人作り、キメラアントの肉体と命令系統を与える。
しかも、
- 王
- 三護衛軍
- 師団長
- 兵隊長
- 人間型キメラアント
- 操作された人間
が同時に存在する。
通常兵器だけで鎮圧しようとすれば、都市単位の被害が出る。
国家が一つずつ侵食され、政治指導者を殺害・操作されれば、国際社会は統一対応しにくい。
東ゴルトーが短時間で乗っ取られたこと自体が、その実証になっている。
キメラアントが危険なのは、敵を素材にして強くなるから
人間側が強い念能力者を投入すると、その人物が敗北した場合、敵の餌と知識になる。
ポックルは、念の六系統や修行法をピトーへ与える結果になった。
念能力者の肉は、王の力を増幅させる。
人間の記憶や人格は、次世代の蟻へ残ることがある。
つまり、人類の反撃戦力が、失敗するとそのまま敵の研究開発資源になる。
強い人間を投入
↓
敗北
↓
肉体・オーラ・記憶・念知識を回収される
↓
次の蟻がさらに強くなる
通常の侵略者は、敵を倒しても自動的に進化しない。
キメラアントは、戦争をするほど学習素材が増える。
「45万人犠牲」は近いが、最終報告の数字ではない
原作No.318の事後報告では、東ゴルトー関連の被害が具体的に示される。
内訳は次のとおりである。
| 区分 | 死者数 |
|---|---|
| 選別の過程で死亡した人民 | 478,594人 |
| 死亡した兵士 | 12,905人 |
| プフの催眠から覚醒後、24時間以内に死亡した人民 | 46,613人 |
| 合計 | 538,112人 |
計算は、
478,594
+ 12,905
+ 46,613
= 538,112
である。
「45万人」という記憶は、選別による民間人死亡の約47万9千人と混ざった可能性が高い。
ざっくり言えば「約48万人」が第一の被害区分であり、兵士と催眠後死亡者まで含めると「約54万人」になる。
53万8,112人にも含まれない可能性がある犠牲
事後報告の数字は大規模な公的集計である。
一方、物語中には、
- NGLで捕食された住民
- 女王の餌となった人々
- 王や護衛軍が宮殿で殺した者
- 盤上競技の名人
- 個別に狩られた念能力者
などもいる。
集計の対象範囲によっては、すべてが53万8,112人へ含まれているとは限らない。
したがって、この数字は「キメラアント編で死亡した全人類の完全な総数」ではなく、東ゴルトーの選別とその周辺被害について作中で報告された主要集計と見るのが安全である。
討伐成功は、人類が通常戦力で上回ったことを意味しない
人類側は最終的に勝つ。
しかし、戦力で正面から圧倒したわけではない。
- ネテロが王を隔離する
- ミニチュアローズを体内へ仕込む
- 王を爆心地で被爆させる
- 毒による連鎖的な死を利用する
- 討伐隊が護衛軍を分断する
- コムギとの関係が王の行動を変える
という複数の要因が重なっている。
ネテロの百式観音でも、王へ決定打を与えられない。
人類が勝てた最大の理由は、個体戦闘力ではなく、
安価に大量生産できる大量破壊兵器と、相手が理解していなかった毒性を持っていたこと
である。
これは勝利であると同時に、通常の念能力者だけでは止められなかった証明でもある。
それでも「人類滅亡」が確定ではない理由
反証もある。
メルエムの思想は変化していた
コムギとの交流後、メルエムは人間を一括して家畜とみなす考えから離れ始める。
生かす価値のある人間を認め、ネテロとの対話も試みる。
最終的には、人類へ力を使う方向を再考した可能性すらある。
キメラアント側は一枚岩ではない
王の誕生後、多くの師団長が独立する。
コルト、メレオロン、イカルゴ、ウェルフィン、ブロヴーダのように、人間側へ協力または共存する個体もいる。
人間由来の人格が、種としての統制を崩す。
人類には国家兵器がある
ミニチュアローズは、小国でも製造可能な安価な兵器として描かれる。
人類が生存を最優先にすれば、キメラアントの拠点ごと焼く選択肢がある。
その代償は、民間人、環境、周辺国家を巻き込む破滅的なものになる。
つまり、人類には勝ち筋がある。
しかし、それは文明的な勝利ではなく、相互破壊に近い。
結論
キメラアントが勝てば、人間が一人残らず消えるとまでは断定できない。
だが、東ゴルトーの時点で、
- 約500万人を選別対象にする
- 約495万人を死亡させる計画
- 5万人の念能力者軍団を作る
- 国家を短期間で乗っ取る
- 念能力者を餌と学習素材にする
- 実際に53万8,112人の死亡が報告される
ところまで進んでいる。
これは「強い敵が出てきた」ではない。
国家災害、世界征服、生物災害、軍事技術拡散が同時に起きている。
ラモットさん一体でも、平均的な人間には重い。
その上に師団長、護衛軍、王がいて、さらに5万人の念兵を作ろうとしていた。
普通に終わる。
討伐隊が止めたのは、強敵一体ではない。
人類が食料と兵器へ変換される量産ラインそのものだった。
