問題が起きた時、すぐに「誰がやったか」を探していないか
職場で小さな問題が起きることがあります。
駐車位置がおかしい。
誰かが弁当を取り違えた。
備品が戻っていない。
鍵が閉まっていない。
共用スペースの使い方が悪い。
こういう時、すぐに始まりがちなのが「犯人探し」です。
誰の車か。
誰が食べたのか。
誰が最後に使ったのか。
どこの部署か。
誰に聞けば分かるか。
そして、課長や係長が工場内を歩き回り、聞き込みを始める。
一見すると、責任感のある対応に見えます。
でも、フラットに見るとかなり赤字です。
問題そのものより、特定作業の人件費の方が高くなっている可能性があるからです。
問題より「特定コスト」が高くなる
たとえば、弁当の取り違えがあったとします。
弁当1個の金額は、数百円から千円程度かもしれません。
しかし、それを課長が30分〜1時間かけて探し回ったらどうでしょうか。
弁当の損失:数百円〜千円程度
課長・係長の時間:30分〜1時間
周囲への聞き込み時間:複数人分
現場の中断:あり
再発防止:なし
この時点で、損失の本体は弁当ではありません。
損失の本体は、特定作業に使った人件費です。
駐車場でも同じです。
駐車位置がおかしい車がある。
でも、日時・場所・写真・ナンバー・所属情報が残っていない。
それなのに係長が工場を歩き回って誰の車か聞いて回る。
これはもう、問題対応というより 人力ログ復元 です。
証跡がある問題と、証跡がない問題を分ける
問題発生時にまず分けるべきなのは、善悪ではありません。
証跡があるかどうか です。
証跡あり:
写真がある
日時がある
場所がある
車両情報がある
注文者名がある
チェック表がある
記録がある
証跡なし:
誰かが見たらしい
たぶん誰かがやった
場所や時間が曖昧
対象者が分からない
記録が残っていない
証跡があるなら、個別対応できます。
証跡がないなら、個別特定は無理にやらない。
全体周知やルール整備で対応する。
この切り分けだけで、かなり無駄が減ります。
生産性の高い対応パターン
問題が起きた時の対応は、次のように分けるとよいです。
1. 証跡がある
→ 個別確認・個別指導
2. 証跡がない
→ 全体周知で終了
3. 同じ問題が繰り返される
→ ルール化・掲示・チェック表・注意カード運用
4. 重大な事故につながる
→ 仕組み変更・責任者設定・記録運用
5. 小さな問題で損失も小さい
→ 特定コストが損失を上回らない範囲で対応
大事なのは、すべての問題を全力で追いかけないことです。
問題の大きさに応じて、対応コストを決める。
これが生産性です。
駐車位置トラブルならどうするか
駐車位置の問題なら、人力で聞き回るより、次のような運用にした方が早いです。
駐車位置がおかしい車を見つけた人が記録する項目:
・日時
・場所
・車両の特徴
・写真
・可能ならナンバー
・通路や出入口への影響
証跡があるなら、個別に確認できます。
証跡がないなら、全体周知で終わりです。
駐車位置について、指定区画・通路確保・出入口付近への駐車に注意してください。
今後、駐車位置の不備が確認された場合は、写真・日時・場所を記録のうえ、個別に確認します。
さらに指導が必要なら、注意カードを使う方法もあります。
ただし、車体に直接ステッカーを貼るとトラブルになる可能性があります。
ワイパーに紙を挟む、駐車許可証番号で連絡する、写真を保存するなど、トラブルになりにくい方法が無難です。
弁当の取り違えならどうするか
弁当の取り違えも、人力で探し回るより仕組みにした方が早いです。
対策例:
・注文者名を貼る
・部署別に置き場を分ける
・受け取り時にチェック欄をつける
・余りや不明分は担当者へ確認
・取り違えた場合は本人が申告
・特定できない場合は全体周知で終了
弁当1個の取り違えに、課長や係長が走り回るのは赤字です。
本当に再発防止したいなら、誰が食べたかを探すより、次から間違えにくい置き方にする方が生産的です。
注意カードのテンプレート
駐車位置について確認事項があります。
以下の点について確認をお願いします。
□ 指定区画外への駐車
□ 通路・出入口付近への駐車
□ 駐車位置のはみ出し
□ その他:________
お手数ですが、○月○日までに○○係長までご連絡ください。
今後の安全確保と円滑な運用のため、ご協力をお願いいたします。
これなら、係長が工場を歩き回って聞き込みをする必要がありません。
問題発生時の報告テンプレート
問題内容:
例:駐車位置が指定場所からはみ出していた
発生日時:
○月○日 ○時頃
発生場所:
○○駐車場 / ○○入口付近
確認できる情報:
写真あり / ナンバー確認済み / 車両特徴 / 注文者名 / 担当部署など
影響:
通路が狭くなった / 出入口が使いづらい / 他の人の弁当がなくなった など
希望する対応:
全体周知 / 個別確認 / ルール掲示 / 再発防止
これがない報告は、個別対応ではなく全体周知に回す。
そう決めておくだけで、無駄な聞き込みが減ります。
問題解決と犯人探しは違う
問題解決と犯人探しは違います。
犯人探しは、過去に戻ろうとする行為です。
問題解決は、次に起きにくくする行為です。
犯人探し:
誰がやったか
なぜやったか
誰に謝らせるか
問題解決:
なぜ起きたか
記録は残るか
次からどう防ぐか
誰が見ても分かるルールか
対応コストは適切か
生産性が高いのは、後者です。
まとめ
問題が起きた時に、すぐ人を探し始める職場は多いです。
しかし、問題そのものより特定作業の方が高くつくことがあります。
弁当1個の取り違え。
駐車位置1件のズレ。
備品の小さな行き違い。
こうした問題に、課長や係長が走り回って聞き込みをするのは、かなり赤字です。
生産性の高い対応は、次の通りです。
証跡があるなら個別対応。
証跡がないなら全体周知。
繰り返すならルール化。
重大なら記録運用を強化。
小さい問題なら特定コストをかけすぎない。
問題発生時に大事なのは、犯人を探すことではありません。
次から起きにくくすることです。
そして、役職者の時間を小さな特定作業に燃やさないことです。

