結論――完全な安全圏ではないが、作中より低リスクのハメ運用は成立し得た
ナックルがユピーへハコワレを付けた後、勝利条件はユピーを殴り倒すことではない。一定距離内で利息を進め、債務を残存オーラ量より大きくして強制絶へ送ることである。
ここで重要なのは、能力の射程条件を知っているのがナックル側だという点だ。ユピーには、術者の正確な位置、方角、射程半径、利息停止条件が自動で説明されない。ポットクリンが見えても、それだけで「術者は半径50メートル以内にいる」と理解できるわけではない。
したがって、基本形は次のようにできる。
遮蔽物の裏でメレオロンが呼吸を整える
↓
ナックルと接触して透明化
↓
前回とは違う方向から接近
↓
一発だけ貸し付ける
↓
透明状態のまま即離脱
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別の遮蔽物で解除・息継ぎ
↓
利息を待ちながら再配置
これは「隠れる0」と「姿を出して戦う1」の間にある運用である。短時間だけ接敵し、それ以外は位置情報を与えない。ユピーからすれば、どこかに見えない襲撃者がいて、壊せない念獣の数字が増え、いつ別方向から殴られるか分からない。
シュートの支援も、名乗らずにできた
作中のナックルは、シュートが削られるのを見ながら潜伏し、限界局面で姿を現してユピーのヘイトを自分へ向ける。緊急救命としては即効性がある。しかし、それ以前に透明攻撃を断続的に入れる中間案があった。
ユピーがシュートへ攻撃を集中する瞬間に一発入れれば、少なくとも注意を分散させられる。パンチの物理的なよろめきがどこまで残るかは能力処理上断定できないが、「見えない敵がまた来た」という警戒は強制できる。シュートだけを見続けることが難しくなり、同時にハコワレの元本も増える。
つまりナックルは、姿を明かさなくても、
- シュートへの集中を乱す
- ユピーへ心理的ストレスを与える
- 借金を増やす
- 自分の正体と位置を伏せる
を同時に狙えた。
モラウの煙は強力だが、必須条件ではない
モラウの煙人形と煙幕があれば、索敵をさらに混乱させられる。ただし宮殿には壁、階段、塔、高低差があり、ナックル自身も逃走能力に優れる。メレオロンの息が続く短い区間だけ透明化し、移動と息継ぎを分ければ、煙なしでも一定の運用は可能だったと考えられる。
ただし「安全圏」と呼び切るのは強すぎる。ユピーには広範囲攻撃、地形破壊、高速変形がある。遮蔽物ごと吹き飛ばされる可能性があり、透明でも巻き込み攻撃は避けられない。ナックルとメレオロンが接触したまま高速で逃げる必要もある。
より正確には、ユピーに射程と位置を教えない非対称な危険圏である。
ユピーのバトルIQが高くても、材料がなければ解析できない
ユピーは戦闘中に怒りを制御し、変形を戦術へ組み込み、偽の隙を作り、最後にはナックルの仲間思いを利用する。バトルIQは高い。
しかし推理は、観測できた情報からしかできない。ナックルが名乗らず、攻撃方向を変え、利息停止と接近のタイミングも悟らせなければ、ユピーは正確な能力仕様へ到達しにくい。
対抗策としては、
- 広範囲攻撃で潜伏候補地点を消す
- 王のもとへ移動し、術者を追従させる
- 数字の増減を観測して距離条件を推測する
- 仲間を人質にして術者を引き出す
がある。実際に最後の方法はナックルへ刺さった。能力を攻略したというより、使用者の性格を攻略したのである。
なぜ作中では徹底しなかったのか
後知恵で最適化すれば、透明ヒット・アンド・アウェイは魅力的である。しかし突入時の討伐隊には、秒単位の混乱、仲間の負傷、王の移動、呼吸制限、未知の変形能力が重なっていた。作戦目的も「ユピー撃破」だけでなく、王との分断と仲間の通過である。
さらにナックルは、合理性だけで仲間を切れる人物ではない。シュートのために一発殴り返したくなり、モラウを救うために解除を選ぶ。その情の厚さはハコワレの非殺傷性と一致する一方、冷酷なハメ運用とは相性が悪い。
能力はハメ向きだが、能力者本人は完全なハメ役になれない。
そこがナックルの魅力であり、敗因でもある。
