エルヴィンの特攻はなぜ必要だった? ジークを逃した代償が重すぎる『進撃の巨人』

題材:『進撃の巨人』

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概要: シガンシナ区決戦で調査兵団がほぼ壊滅した理由、リヴァイがジークを即座に殺さなかった事情、その後の脊髄液ワイン事件、初代リヴァイ班の悲劇、車力の巨人・ピークの顔が変わって見える理由をまとめて振り返る。

※原作最終盤までの重大なネタバレを含む。

結論:調査兵団は勝った。なのに勝った気がしない

『進撃の巨人』のシガンシナ区決戦、アニメ第53話「完全試合(パーフェクトゲーム)」から第54話「勇者」の流れは、見返しても胃が痛い。獣の巨人が石を投げる。新兵が倒れる。また投げる。あまりにも一方的で、人類側だけ戦争、ジーク側だけ野球の投球練習みたいになっている。

調査兵団は最終的にウォール・マリアを奪還し、地下室の真実にも到達する。しかし帰還した団員はわずか9人。エルヴィン団長も戻らない。「作戦成功」と「組織としての壊滅」が同時に起きた戦いだ。

エルヴィンの突撃は、なぜあんなに残酷なのか

獣の巨人は遠距離からの投石で兵士をまとめて吹き飛ばす。馬を失えば退路も失う。真正面からリヴァイが走っていっても、たどり着く前に狙われる。

そこでエルヴィンが選んだのは、自分と新兵が馬で突撃して敵の視線を引きつけ、その間にリヴァイが周囲の巨人を足場に接近する方法だった。突撃する側の生存確率は極めて低い。しかも新兵たちは恐怖で震えている。

それでもエルヴィンは先頭に立つ。自分が見たかった地下室の答えを、目の前で手放してまで。演説は名場面だが、感動できることと、新兵がかわいそうなことは両立する。むしろ両方が同時に襲ってくるから忘れられない。

リヴァイはなぜジークをその場で殺さなかった?

新兵の犠牲で接近したリヴァイは、獣の巨人を短時間で圧倒する。ここで「もう首を落としてくれ!」となるのは自然な反応だ。

ただしリヴァイには、巨人化の注射を使い、生き残った瀕死の味方にジークを食べさせて獣の巨人の力を継承させるという選択肢があった。捕獲して力も回収することを考えた、ほんのわずかな時間。その隙に車力の巨人がジークを救出する。

ジークを殺し切れなかったのは、リヴァイが戦闘で負けたからではない。勝った直後に「殺すか、継承させるか」という判断が挟まり、ピークの救出が間に合った。だからこそ悔しい。犠牲は取り戻せず、標的だけが生還したのだから。

ジークの被害、あとから請求書が届きすぎる

シガンシナ区での投石だけでも被害は甚大。それで終わりかと思いきや、後にはジークの脊髄液を混ぜたワインが兵団へ広がる。

巨大樹の森では、ワインを飲んでいたリヴァイの護衛兵約30人がジークの叫びで巨人化し、リヴァイはかつての部下を自ら斬ることになる。さらにピクシスら軍の上層部にも脊髄液の被害が及ぶ。ジークはリヴァイとの直接対決では何度も追い詰められるのに、人員・指揮系統・信頼関係への損害を積み上げていく。

対リヴァイ戦の勝率は低いのに、調査兵団への被害総額が高すぎる。 戦績表だけ見たら負けているのに、組織の決算書を開いたら大赤字。恐ろしいタイプの敵だ。

「リヴァイ班がほぼ全滅」は、二つの悲劇を分けるともっと重い

最初の特別作戦班、いわゆる初代リヴァイ班では、ペトラ、オルオ、エルド、グンタの4人が女型の巨人に殺される。精鋭を集めた部隊が、短時間で消えた。

その後に再編された新リヴァイ班にはエレン、ミカサ、アルミン、ジャン、コニー、サシャらがいる。こちらまでシガンシナ区で「全員死亡」したわけではない。一方、巨大樹の森で脊髄液によって巨人化した約30人は、ジークを監視していた別の護衛部隊だ。

つまり「リヴァイ班」という一語ですべてをまとめると、各場面の悲惨さを取りこぼす。初代精鋭は守り切れず、エルヴィンの部隊は壊滅し、監視を任された部下は自分の手で討つ。 本人は人類最強なのに、一緒に戦う人間の生存率がやけに低い。強さがそのまま救済にならないのがつらい。

ジークを運んだ車力の巨人、ピークの顔も変わりすぎでは?

あの場面でジークを連れ去る車力の巨人は、初期の異様な顔つきが記憶に残る。物語が進み、ピーク・フィンガーの人間姿を知ったあとに見返すと、「え、同じキャラ?」となる。

車力の巨人の見た目は掲載時期やアニメの描写で印象が異なる。さらに作者インタビューを紹介した資料では、車力の継承者は当初中年男性として構想され、ピークの人物像が後に女性へ変更されたと説明されている。ここは作品世界の中で突然顔が変わったという設定より、制作時のデザインの変遷として読むのが自然だ。

そして初登場付近の不気味さと、後年のピーク本人の落ち着いた雰囲気の落差がすごい。リヴァイにとっては一瞬でジークを奪う救助担当。視聴者にとっては後から正体を知って二度見する担当。仕事が多い。

あそこでジークを殺していたら、地鳴らしまで変わった?

これは考察になる。ジークは王家の血を引く巨人の継承者であり、のちにエレンが始祖の力へ接近するうえで重要な存在になる。だからシガンシナ区で死亡していれば、作中と同じ手順で進むエレンとジークの計画は成立しにくい。

ただし「そこで殺せば地鳴らしは絶対に起きなかった」とまでは言えない。始祖の力、王家の血、ヒストリアの存在、別の継承者が生まれる可能性など、物語には条件が複数ある。確実なのは、ジーク本人が後に与える損害と、彼を利用した計画の経路が大きく変わることだ。

結局、一番えぐいのはここだと思う。エルヴィンと新兵たちは、リヴァイに「一度だけ届くチャンス」を渡した。その一度で獣の巨人に勝った。でもジークには逃げられた。 強敵との戦いに勝つことと、長い戦争を終わらせることは、まったく別だった。

参考資料(4件)

もう一歩くわしく: 『コードギアス』ゼロが離脱したとき黒の騎士団はなぜ撤退すべきだった?

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