引っ越し後のWi-Fi通信エラーで、プリンター設定・ルーター管理画面・パスワード再設定まで一周してから物理配線に戻った話
引っ越し後、プリンターで印刷しようとしたら「通信エラー」。
本体のWi-Fiランプも妙に点滅している。
「はいはい、Wi-Fiの接続先が変わったからプリンターを再設定ね」と思う。
ここからが沼だった。
液晶のないプリンターなので、SSIDとパスワードを本体に直接入力できない。公式のセットアップツールを開く。WPSはない。USBケーブル経由か。面倒くさい。
では逆に、昔使っていたルーター側を以前と同じSSIDに戻せば、プリンターが勝手に復帰するのでは?
今度はルーターの管理画面に入ろうとする。tplinkwifi.netが開かない。デフォルトゲートウェイを調べる。違う。APモード時の管理IPを探す。192.168.0.254でようやく開く。ところがログインパスワードが分からない。パスワード再設定を押すと、そのルーター自体がインターネットへ出られないので再設定ページもまともに使えない。
「プリンター1枚刷りたいだけなんだけど?」
そして最終的な犯人は、プリンターでも、ドライバーでも、Wi-Fiパスワードでも、ルーターの故障でもなかった。
壁にLAN端子が複数あり、最初に使っていた方には実質的に上流ネットワークが来ていなかった。
別の壁LAN口へルーターを差し替えた瞬間、Internetランプが点灯。スマホのWi-Fiが復活。しばらくするとプリンターも何事もなかったように「印刷できます」。
お前、ずっと無罪だったのか。
この記事は、この「設定沼を一周して、最後に壁の穴が犯人だった」事件を、次回5分で終わらせるための切り分け手順に変換する。
0. 30秒版――設定画面より先に「物理リンク」を見る
引っ越し後にWi-Fiプリンターが急に使えなくなったら、いきなりドライバー再インストールや工場出荷リセットをしない。
順番はこれでいい。
- ルーターの電源が入っているか。
- 2.4GHz / 5GHzのWi-Fiランプが点いているか。
- Internet / WANランプが点いているか。
- 壁LANが複数あるなら、別のLAN口を試す。
- スマホをそのWi-Fiにつないで、実際にWebが開くか確認する。
- そこまで正常なら、初めてプリンター側を見る。
ネットワーク障害は、上の設定から考えると沼になりやすい。
電源 → ケーブル → 壁LAN → WANリンク → インターネット → Wi-Fi → プリンター
の順に、下から確認する方が速い。
1. なぜ「プリンター故障」に見えたのか
最初の症状はプリンター側に出た。
Windowsには通信エラー。プリンターのWi-Fiランプも不安定。引っ越し直後なので「接続先が変わった」と考えるのは自然だ。
しかもPCは有線で普通にインターネットが使えていた。
これが強烈なミスリードだった。
実際には、
- PCは「ネットが来ている壁LAN口」へ直接接続
- ルーターは「ネットが来ていない別の壁LAN口」へ接続
- スマホとプリンターは、そのルーターのWi-Fiへ接続
という二系統になっていた。
PCだけ見ると「家のネットは正常」。
スマホを見ると「Wi-Fiには接続済みだがインターネットなし」。
プリンターを見ると「通信エラー」。
全部の症状は矛盾していない。ただ、機器を一個ずつ見ていると別々の故障に見える。
2. Wi-Fiが飛んでいることと、インターネットにつながることは別
ここが一番重要だ。
ルーターは上流回線が死んでいても、Wi-Fiの電波自体は飛ばせる。
つまりスマホに、
「Wi-Fi接続済み」
と表示されていても、
「そのWi-Fiからインターネットへ出られる」
とは限らない。
家庭用ルーターは大ざっぱに言えば、
有線の上流ネットワークを受ける役 と 家の中にWi-Fiを配る役
を同時にやっている。
後者だけ生きていると、「SSIDは見える。接続もできる。でもWebは開かない」という非常に紛らわしい状態になる。
今回まさにそれだった。
3. 壁に「LAN」と書いてあっても、両方がインターネットにつながっているとは限らない
壁のLANジャックは見た目が同じでも、裏側の配線状態まで同じとは限らない。
たとえば、
- 情報分電盤で片方だけ上流にパッチされている
- 片方は部屋間配線用
- 別のVLANや設備用
- 将来用で未接続
- 以前の入居者や設備構成で接続先が変わっている
といったことがある。
だから「LAN CAT5e」と書いてあることは、LANケーブルを挿せる端子であることは示しても、今ここにインターネットが来ていることまでは保証しない。
最強の確認方法は仕様書を読むことではない。
実際につないでリンクが立つかを見る。
一方の壁口ではルーターのInternetランプが消灯、もう一方へ差し替えたら点灯。その瞬間にほぼ勝負はついた。
4. 管理画面より先にLEDを見ると速い
今回使ったArcher A10 V1の公式マニュアルでは、前面LEDは次のように説明されている。
- Power:電源状態
- 2.4GHz Wireless:2.4GHz Wi-Fiの有効状態
- 5GHz Wireless:5GHz Wi-Fiの有効状態
- Internet:青点灯ならインターネット利用可能、オレンジ点灯ならInternetポートは接続済みだがインターネット利用不可、消灯ならInternetポート未接続
- Ethernet:LANポートに電源の入った機器が接続されているか
- WPS:WPS接続状態
これを知っていれば、管理画面のパスワードを思い出す前にかなり切り分けられる。
特に重要なのはInternetランプ。
Wi-Fiランプは点いているのにInternetランプが消えている。
この時点で「プリンターのSSID設定」を掘る優先度はかなり下がる。
まず上流ケーブル、壁口、WANポートを見るべきだった。
5. APモードだと管理画面の住所まで変わって、さらに沼る
ルーターをアクセスポイント/ブリッジとして使っていると、管理画面の入り方まで変わることがある。
TP-LinkはArcher A10を例に、ブリッジモードで上流から切り離した場合、tplinkwifi.netまたは192.168.0.254で管理画面へ入る手順を案内している。
さらに公式FAQでは、APモードでは既存ルーターのLANポートとA10のWANポートをつなぐ構成を推奨している。
この仕様を知らないと、
「192.168.0.1が開かない」 →「ルーター壊れた?」 →「TP-Link IDのパスワード?」 →「再設定メール?」 →「でもルーターがネットにつながってないから再設定ページも動かん!」
という、実に美しい無限コンボが完成する。
管理画面に入れないこと自体が、今回の主原因ではなかった。
6. なぜ回線を直しただけでプリンターまで勝手に復活したのか
液晶のないWi-Fiプリンターは、必要ならEpson Web Installerなどを使って無線設定をやり直せる。エプソンもPX-S155を含む液晶なし機種について、その設定手順を案内している。
ただし今回は、結局それをやる必要がなかった。
プリンター側には以前のWi-Fi設定が残っていた。
ルーターも以前と同じ無線設定を使っていた。
そこでルーターの上流回線だけが復旧すると、プリンターはもともと知っているWi-Fiへ再接続し、PCから再び到達できるようになった。
つまり、
「プリンターがWi-Fiにつながらない」ではなく、「プリンターがつながっているWi-Fiの先が死んでいた」
のである。
ここを間違えると、正常なプリンターを初期化して仕事を増やす。
7. 今回の遠回りで分かった「やらない方がいい順番」
今回やりかけたことは、どれも単体では間違いではない。
- プリンターの無線LAN再設定
- Epsonのセットアップツール
- WPS確認
- USB経由設定
- ルーター管理画面ログイン
- TP-Link IDのパスワード再設定
- ルーター初期化
ただし、物理リンクが死んでいる段階でやると全部遠回りになる。
特に工場出荷リセットは最後。
リセットすると、もともと正常だったSSID、パスワード、APモード、その他設定まで消える。
「原因調査」だったはずが「復旧作業を自分で増やすイベント」に変わる。
ネットワーク障害では、上位設定を触る前に、下位の接続を潰す。
これは家庭でも会社でもかなり強い。
8. 次回の最短チェックリスト
同じ症状が出たら、これだけでいい。
A. まずスマホ
そのルーターのWi-Fiに接続する。
Webが開かなければ、プリンターよりルーター上流を疑う。
B. ルーター前面
Internet / WANランプを見る。
消灯なら、設定画面よりケーブル。
C. 壁LAN
壁口が複数あるなら、一つずつ試す。
「LANと書いてあるから全部有効」は思い込まない。
D. 同じケーブルで比較
可能なら、ネットが通る壁口+同じLANケーブルをPCとルーターで使い分けて比較する。
これで壁、ケーブル、ルーターのどこが怪しいかが一気に狭まる。
E. ここまで正常ならプリンター
初めてプリンター再起動、Wi-Fi再設定、ドライバー確認へ進む。
9. 物理作業が嫌いな人向けの再発防止
今回いちばん精神を削ったのは、ネットワーク理論ではなかった。
机の下へ潜る。
配線カゴを避ける。
奥のケーブルを抜く。
違う穴へ刺す。
立つ。
ランプを見る。
また潜る。
この「人間をケーブルの付属品にする作業」である。
だから復旧後は、完璧な配線整理より次の2つだけやる方が費用対効果が高い。
- 有効だった壁LAN口に小さく印を付ける。
- 正常な配線状態を写真で1枚残す。
これだけで次回の「どっちの穴だっけ?」が消える。
美しい配線より、未来の自分が5秒で復元できる配線の方が実用上は強い。
10. ただし、別原因のケースもある
壁LANを差し替えて直ったからといって、すべての「Wi-Fi接続済み・インターネットなし」が壁口原因ではない。
別ケースでは、
- 建物側ネットワークの認証
- MACアドレス登録
- DHCP不調
- PPPoE / IPoE設定
- VLAN
- ルーターのWAN故障
- LANケーブル不良
- DNS障害
- プリンター側の2.4GHz対応条件
- SSID、暗号化方式、パスワード変更
などもあり得る。
大事なのは原因を決め打ちすることではなく、下から順に層を潰すこと。
今回の教訓は「壁LANを疑え」だけではない。
設定を疑う前に、信号がそこまで来ているか確かめろ。
これである。
結論――ラスボスが設定画面とは限らない。壁の穴かもしれない
最初はプリンターの通信エラーだった。
そこからWi-Fi設定、Epsonソフト、WPS、USB、TP-Link管理画面、デフォルトゲートウェイ、APモード、TP-Link IDのパスワードまで旅した。
最後にやったのは、
LANケーブルを別の壁口に刺す。
以上。
Internetランプが点灯。
スマホ復活。
プリンターも自動復帰。
印刷できます。
ネットワークトラブルは、知識があるほど設定画面へ走りたくなることがある。
でも現場では、賢そうな原因より先に、ケーブル・ポート・ランプを見る方が強い。
プリンターが悪そうに見えても、プリンターが犯人とは限らない。
たまに犯人は、壁である。
