はじめに:初めてのQCは、大きく勝つより小さく一周する
初めてQC活動を行うチームが、最初から大きなテーマに取り組むと失敗しやすい。
会社全体の制度変更。
他部署の大きな調整が必要な問題。
システム改修が必要なテーマ。
効果確認に長期間かかる課題。
こういうテーマは重要ではある。
しかし、初めてQC活動を行うチームには重すぎることがある。
初回QCで大事なのは、大きな問題を完璧に解決することではない。
大事なのは、次の一連の流れを体験することだ。
- 困りごとを出す
- 数字で現状を見る
- 原因を考える
- 対策する
- 効果を見る
- 標準化する
- 発表資料にまとめる
つまり、初回QCは「大きく勝つ」よりも、小さく一周することを優先した方がよい。
この記事では、初めてQC活動を進めるリーダーやメンバー向けに、QC活動の進め方を実践編として整理する。
なお、各社・各部署で使っている評価シートの観点は異なる。
そのため、この記事では具体的な社内評価項目名には踏み込みすぎず、どの職場でも使いやすい形で説明する。
QC活動運営 実践編とは
QC活動には、大きく分けて3つの段階がある。
1つ目は、実践編。
実際に困りごとを出し、数字で見て、原因を考え、対策して、効果を見る段階である。
2つ目は、チーム運営編。
リーダーが役割分担や計画を決め、メンバーが担当作業を進め、活動ログを残す段階である。
3つ目は、資料作成編。
実践した内容を、評価シートに沿って、聞き手に伝わる資料にまとめる段階である。
今回扱うのは、主に1つ目と2つ目である。
つまり、PowerPointを作る前の段階だ。
QC活動運営 実践編では、次のように進める。
- 評価シートを見る
- 評価シートの観点から困りごとを出す
- テーマ候補を選ぶ
- 初回QCとしてできるか判定する
- 数字を取る
- QC7つ道具を使って見る
- 原因を考える
- 対策する
- 効果を見る
- 標準化する
- 活動ログを残す
- 最後に資料作成へつなげる
ここで大事なのは、評価シートを「最後に採点されるもの」とだけ考えないことだ。
評価シートは、活動前にも使える。
評価シートは、活動の地図になる。
評価シートは活動の地図になる
QC活動でよくある失敗は、最初にこう聞いてしまうことだ。
困っていることはありますか?
この聞き方だけだと、意見が出にくい。
出たとしても、愚痴や感想になりやすい。
そこで使うのが、評価シートである。
評価シートには、テーマ選定や現状把握で見られる観点が書かれている。
それをそのまま「困りごとを出す切り口」として使う。
ただし、社内評価の具体的な項目名は会社ごとに違う。
この記事では一般化して、次のような問いに置き換える。
- 職場として困っていることは何か
- 後ろの工程や他の人に手戻りを出していないか
- 会社や部署が重視していることを邪魔していないか
- 時間がかかっている作業はないか
- 特定の人しかできない作業はないか
- 放置するとミスや事故につながりそうなことはないか
- 作業しにくい環境や探しにくい情報はないか
- 新人やメンバーがつまずきやすい作業はないか
このように、評価シートの観点を問いに変える。
すると、困りごと出しがかなりやりやすくなる。
困りごとは「評価シートの切り口」で出す
困りごとを自由に出すだけだと、話が散らかりやすい。
そのため、最初から切り口を決めて出す。
| 切り口 | メンバーに聞く問い | 例 |
|---|---|---|
| 職場の困りごと | 職場として困っていることは? | 締め日前に確認作業が集中する |
| 後工程への影響 | 後ろの人に手戻りを出していることは? | 記入漏れで確認依頼が発生する |
| 作業のムダ | 時間がかかっている作業は? | 同じ内容を二重入力している |
| 属人化 | 特定の人しかできない作業は? | 休むと処理が止まる |
| 未然防止 | 放置すると大きな問題になりそうなことは? | 小さなミスが毎月発生している |
| 環境・導線 | 作業しにくい、探しにくいことは? | 書類置き場が分かりにくい |
| 教育・技能 | 新人やメンバーがつまずくことは? | 手順が分からず毎回質問が出る |
このように、評価シートの観点を、困りごとを出すための質問に変える。
ポイントは、ゼロからテーマを考えないことだ。
評価シートに書いてある切り口を使えば、テーマ候補を出しやすくなる。
空欄を埋めることがQC活動になる
QC活動では、評価シートに沿ったシートを作り、その空欄を埋めていくと進めやすい。
| 切り口 | 問い | 今回の回答 | 必要な数字 | 次にやること |
|---|---|---|---|---|
| 職場の困りごと | 何に困っている? | |||
| 後工程への影響 | 誰に手戻りが出ている? | |||
| 作業のムダ | どんなムダ工数がある? | |||
| 現状把握 | どれくらい発生している? | |||
| 原因 | なぜ起きている? | |||
| 対策 | 何を変える? | |||
| 効果確認 | 改善したかどう見る? |
空欄があるということは、まだ分かっていないということだ。
分かっていないなら、次にやることが見える。
- メンバーで話し合う
- 現場を見る
- 件数を数える
- 時間を測る
- 関係者に聞く
- QC7つ道具で整理する
つまり、空欄を埋めることがQC活動そのものである。
初回QCのテーマは小さい方がいい
初めてのQCでは、テーマを小さくした方がよい。
大きいテーマは重要そうに見える。
しかし、初回QCには向かないことが多い。
初回QCで選びやすいテーマは、次の条件を満たすものだ。
| 見るポイント | OKなテーマ |
|---|---|
| 小さい | 1部署・1作業・1場面で扱える |
| 数字で見える | 件数・時間・回数で測れる |
| 自分たちで触れる | チーム内で対策できる |
| 期間内に試せる | 数週間から数か月で効果確認できる |
| 効果が見える | 対策前後で比較できる |
| 資料にしやすい | テーマ、現状、原因、対策、効果がつながる |
逆に、初回で避けた方がよいテーマは次のようなものだ。
- 会社全体の制度変更
- 他部署の大きな調整が必要
- システム改修が必要
- 上層部判断が必要
- 原因が広すぎる
- 効果確認に長期間かかる
初回QCでは、大きな問題を完璧に解決するより、小さなテーマで最後まで一周することが大切である。
合言葉はこれでよい。
初回QCは、大きく勝つより、小さく一周する。
テーマ候補は「できるか?」で判定する
困りごとが出たら、すぐにテーマにしない。
まず、QCテーマとして扱えるか判定する。
判定の問いは次の通りだ。
- 数字で見えるか
- 自分たちで触れるか
- 期間内に試せるか
- 効果確認できるか
- 個人攻撃・部署批判にならず扱えるか
- 初回QCとして小さく一周できるか
この6つを満たせるテーマは進めやすい。
たとえば、「打刻漏れが多い」という困りごとなら、件数や確認工数を数えられる。
自分たちで確認方法や注意導線を変えられる可能性がある。
対策前後で比較できる。
このように、数字で見えて、対策できて、効果確認できるなら、初回QCの候補になる。
一方で、制度変更や大規模なシステム改修が必要なものは、初回テーマとしては重い。
重要な問題でも、今回のQCで扱えるとは限らない。
目標設定は「特性・目標・期限」で決める
テーマが決まったら、目標を決める。
目標設定で大事なのは、次の3つである。
- 特性
- 目標
- 期限
特性とは、何を改善するかである。
たとえば、打刻漏れなら「打刻漏れ件数」や「確認工数」が特性になる。
目標とは、どれだけ改善するかである。
たとえば、「月20件を月5件以下にする」という形だ。
期限とは、いつまでに改善するかである。
たとえば、「9月末までに」とする。
この3つを入れると、目標が明確になる。
例文はこうだ。
9月末までに、打刻漏れ件数を月20件から月5件以下にする。
これなら、何を、どれだけ、いつまでに改善するかが分かる。
逆に、
打刻漏れを減らす。
だけでは弱い。
特性、目標、期限を必ず入れる。
QC7つ道具は、活動中に使う道具である
資料作成編では、QC道具は「見せるための道具」になる。
しかし、実践編では、QC道具は「調べるための道具」になる。
活動中に、何を見たいかによって道具を選ぶ。
| 見たいこと | 使う道具 | 何が分かるか |
|---|---|---|
| 事実を集めたい | チェックシート | 発生件数を記録できる |
| 変化を見たい | グラフ | 月ごとの推移が見える |
| 一番悪いものを見たい | パレート図 | 多い種類・原因が分かる |
| 条件別に見たい | 層別 | 時間帯・部署・工程などの差が分かる |
| 原因を広く出したい | 特性要因図 | 原因候補を整理できる |
| 関係を見たい | 散布図 | 2つの関係が見える |
| 異常やばらつきを見たい | 管理図 | いつもと違う動きが見える |
初心者向けには、細かい理論よりも、次の理解でよい。
- まず記録する
- 数字にする
- 分けて見る
- 一番悪いところを見る
- 原因を広げて考える
- 対策前後で比べる
QC7つ道具は、難しい道具ではなく、問題を見えるようにするための道具である。
リーダーは役割分担と計画を決める
QC活動でリーダーがやるべきことは、全部を一人でやることではない。
リーダーがやるべきことは、メンバーが迷子にならないように、役割分担と計画を決めることである。
リーダーが見るポイントは次の通りだ。
- 誰が何を担当するか
- いつまでにやるか
- 何を持ってくるか
- 困っている人はいないか
- 次回までの宿題は何か
- 活動ログが残っているか
リーダーは、全部を自分で作る人ではない。
リーダーは、次に何を決めるかを示す人である。
会議では、次の型を使うとよい。
- 今日の目的
- 前回の宿題確認
- 今日決めること
- 担当と期限
- 困っていること
- 次回までの宿題
これだけでも、活動はかなり進めやすくなる。
メンバーは担当作業を進め、困ったことを出す
メンバーは、全員が同じ作業をする必要はない。
データを集める人。
グラフを作る人。
現場を確認する人。
話し合いを記録する人。
資料の文章を整える人。
それぞれが役割を持って参加すればよい。
メンバーがやることは、次の3つである。
- 自分の担当を進める
- 分からないことを出す
- やったこと・困ったこと・工夫したことを残す
大事なのは、黙って止まらないことである。
困ったら、早めに共有する。
分からないなら、何が分からないかを出す。
工夫したことがあれば、記録する。
それが最後の発表資料にも使える。
ログ担当は「成長・工夫・学び」を拾う
QC活動では、結果の数字だけでなく、活動中の学びや成長も大事である。
社内評価でも、技能・技術の向上、独創性、自発性、達成感、手法やツールの活用、メンバー同士の学び合いなどが見られることがある。
そのため、ログ担当は、ただの議事録係ではない。
ログ担当は、評価に使える成長・工夫・学びの回収係である。
拾うポイントは次の通りだ。
| 見る観点 | ログ担当が拾うこと | メモ例 |
|---|---|---|
| 技能・技術の向上 | できるようになったこと | 初めてパレート図を作成できた |
| 工夫 | いつもと違う考え方をしたこと | 個人責任ではなく仕組みの問題として整理した |
| 自発性 | 自分から動いたこと | メンバーが自分から件数を確認した |
| 達成感 | やってよかった実感 | 対策後に件数が減り、効果を実感できた |
| 手法・ツール活用 | QC道具を使った場面 | チェックシートで件数を集めた |
| 相互啓発 | メンバー同士で学んだこと | Aさんの意見から、発生タイミング別に見る必要性に気づいた |
こうしたログは、最後の反省、無形効果、運営の工夫、今後の対応に使える。
活動が終わってから思い出そうとしても、なかなか書けない。
だから、活動中に拾っておく。
活動ログの例
活動ログは、細かすぎなくてよい。
毎回、次の項目を残すだけでも十分である。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 日付 | 活動した日 |
| 工程 | テーマ選定、現状把握、要因解析など |
| 今日やったこと | 実施した内容 |
| 決まったこと | 今日決定したこと |
| 困ったこと | 止まっていること |
| 工夫したこと | やり方を変えたこと |
| 使ったQC手法・ツール | チェックシート、パレート図など |
| できるようになったこと | メンバーの成長 |
| メンバー同士で学んだこと | 相互啓発 |
| 次回までにやること | 宿題 |
| 担当 | 誰がやるか |
| 期限 | いつまでにやるか |
ログは、後から発表資料を作るときの材料になる。
特に、苦労・努力・工夫は、活動中に記録しておかないと忘れやすい。
ピリつく発言は、改善の問いに変換する
QC活動中は、話し合いがピリつくことがある。
たとえば、次のような言い方が出ることがある。
- あの人が悪い
- あの部署がちゃんとしていない
- 何回言っても直らない
- だから無理
- 自分ばかりやっている
本音としては分かる。
しかし、そのまま出すと、改善ではなく人間バトルになる。
だから、リーダーは言い換える。
| 生の言葉 | 改善の問いへの変換 |
|---|---|
| あの人が悪い | どの場面で起きやすいのか |
| 何回言っても直らない | 注意喚起だけでは定着しないのではないか |
| あの部署が悪い | 後工程にどんな手戻りが出ているのか |
| だから無理 | どこまでなら減らせるのか |
| 自分ばかりやっている | 作業量や役割分担に偏りがないか |
QCは犯人探しではない。
発生しやすい条件を見つけて、仕組みで減らす活動である。
実践編から資料作成編へつなげる
実践編で集めたものは、そのまま資料作成編に使う。
| 実践編でやること | 資料作成で使う場所 |
|---|---|
| 困りごと出し | テーマ選定 |
| 数字を集める | 現状把握 |
| 一番悪いところを見る | 悪さの浮きぼり |
| 原因候補を出す | 要因解析 |
| 真因を確認する | 要因解析 |
| 対策する | 対策の検討と実施 |
| 効果を見る | 効果確認 |
| 続く仕組みにする | 標準化 |
| 活動ログを残す | 反省・無形効果・運営の工夫 |
つまり、実践編を評価シートに沿って進めておけば、資料作成編がかなり楽になる。
逆に、活動中にログや数字を残していないと、最後に資料を作るときに困る。
だから、最初から評価シートを活動の地図として使う。
顧問・アドバイザーとして見るポイント
もし自分がQC顧問・アドバイザーとして関わるなら、見るポイントは限定してよい。
見るのは、進行管理ではなく、幹の部分である。
- 評価シートに沿っているか
- テーマが大きすぎないか
- 初回QCとして小さく一周できるか
- 目標に特性・目標・期限が入っているか
- 現状把握が数字で見えているか
- 原因と対策がつながっているか
- 活動ログが残っているか
- 最後に資料化できる流れになっているか
参加者選定、日程調整、関係部署調整、作業分担、修正反映は、進行担当側で行う。
顧問は、評価シートに沿って幹を確認する。
これで十分である。
まとめ
QC活動運営 実践編のポイントは、次の通りである。
まず、評価シートを活動の地図として使う。
評価シートの観点を問いに変え、困りごとを出す。
出てきた困りごとは、すぐテーマにせず、数字で見えるか、自分たちで触れるか、期間内に効果確認できるかを判定する。
初めてのQCでは、大きく勝つより、小さく一周することを優先する。
目標設定では、特性・目標・期限を決める。
活動中は、QC7つ道具を使って、事実を集め、数字で見て、一番悪いところを絞り、原因を考える。
リーダーは、役割分担と計画を決める。
メンバーは、担当作業を進め、困ったことや工夫したことを共有する。
ログ担当は、決まったことだけでなく、技能向上、工夫、自発性、達成感、QC道具の活用、メンバー同士の学びも記録する。
そして、実践編で集めた内容を、最後に資料作成編へつなげる。
QC活動は、感覚で進めるものではない。
評価シートを地図にして、空欄をメンバーで埋めながら進める活動である。
このやり方なら、初めてのチームでも、QC活動を小さく一周しやすくなる。
