あなたの職場でも、こんなことはありませんか?
引き継ぎや会議の場で、本来は業務の共有をするはずなのに、いつの間にか「人のミス探し」になっている。
終わった話を何度も掘り返す。
誰が間違えたのかを確認する。
みんなの前で共有する。
「なぜミスしたのか」と追及する。
でも、最後は結局、
次から気をつけましょう 確認を徹底しましょう 意識を高く持ちましょう
で終わる。
こういう職場は少なくありません。
XやSNSでも、似たような投稿をよく見かけます。
引き継ぎが、人のミスを探して皆で共有し合って追及するものになっている 終わった話をまた掘り返してミスを追及される 本当は「あなたもミスしてますよ」と言いたいけど、言ったら反感を買うだけ
この感覚はかなり分かります。
本音では、
あなたも同じようなミスをしていますよね?
と言いたくなる。
でも、それを言うと、場は一気にミスの殴り合いになります。
すると本題は、
誰が悪いか 誰のミスが多いか 誰が偉そうに言えるのか どちらが責められるべきか
になってしまいます。
これは再発防止ではありません。
ミス裁判です。
ミスを見ること自体は必要
まず、前提として、ミスを見ないのはダメです。
ミスが起きたなら、見る必要があります。
なぜなら、ミスを放置すると、
- 同じミスが繰り返される
- 顧客や他部署に迷惑がかかる
- 品質が下がる
- 手戻りが増える
- 誰かが毎回尻拭いする
- 現場の信頼が下がる
からです。
だから、
ミスを責めるな 何も言うな 全部許せ
という話ではありません。
ミスは見る。
ただし、見るべきは人格ではありません。
見るべきは、ミスが起きた条件と仕組みです。
「あなたもミスしてますよ」は正論でも燃える
ミスを追及される側は、こう言いたくなることがあります。
あなたも同じようなミスをしていますよね 自分だけ責められるのはおかしいですよね あの人のミスは笑い話なのに、自分のミスだけ追及ですか
これは正直、気持ちとしてはかなり自然です。
しかし、これをそのまま言うと、場は燃えます。
なぜなら、議題が再発防止から、個人同士のミス比較に変わるからです。
あなたもミスしている いや、あなたの方が多い それとこれは違う そっちだって前にやった
こうなると、ただのミス殴り合いです。
だから、言いたい気持ちは分かるけれど、業務上は別の言い方に変換した方が安全です。
個人追及ではなく、仕組みに戻す言い方
たとえば、こう言います。
個人のミスを共有するだけだと再発防止につながりにくいので、次回同じミスが起きない仕組みまで確認したいです。
誰がミスしたかより、どの工程でミスが入りやすいかを整理した方がよさそうです。
今回の件は、チェックポイントや引き継ぎフォーマットを見直す材料にしたいです。
個人追及ではなく、再発防止として「どこで検知できたか」を確認したいです。
同じ条件なら他の人でも起きる可能性があるので、手順や確認方法に落としたいです。
こうすると、「あなたもミスしてますよ」と殴り返さずに、議題を設計へ戻せます。
大事なのは、ミスをなかったことにすることではありません。
ミスを人ではなく、工程に戻すことです。
なぜなぜ分析が人格攻撃になる理由
なぜなぜ分析は、本来、原因を深掘りして再発防止につなげるための方法です。
しかし、職場によっては、なぜなぜ分析が人格攻撃になります。
なぜか。
理由は、問いの向きが間違っているからです。
本来は、
なぜこの工程でミスが起きたのか なぜチェックで拾えなかったのか なぜ手順に抜けがあったのか なぜフォーマットで防げなかったのか なぜ引き継ぎ項目に入っていなかったのか
を見るべきです。
しかし、実際には、
なぜ確認しなかったのか なぜ気づかなかったのか なぜちゃんと見なかったのか なぜ意識できなかったのか なぜ責任感が足りなかったのか
に向かいやすい。
この瞬間、分析対象は工程ではなく、人間になります。
これが、なぜなぜ分析の人格着地です。
悪いなぜなぜ分析の例
悪い例はこうです。
なぜミスした? 確認不足だったから。 なぜ確認不足だった? 注意力が足りなかったから。 なぜ注意力が足りなかった? 意識が低かったから。 対策:意識を高める。気をつける。
これは、分析しているように見えて、ほとんど何も改善していません。
「注意力が足りなかった」 「意識が低かった」 「気をつける」
これで終わるなら、次に同じ条件が来たとき、また同じミスが起きます。
人間は疲れます。
忙しい日もあります。
眠い日もあります。
割り込みもあります。
体調が悪い日もあります。
だから、注意力だけに依存する対策は弱いです。
良いなぜなぜ分析の例
良い例はこうです。
なぜミスした? A項目の確認が抜けた。 なぜ抜けた? チェックリストにA項目がなかった。 なぜなかった? 引き継ぎ時に必要項目として定義されていなかった。 なぜ定義されていなかった? 過去のミス事例が手順に反映されていなかった。 対策:チェックリストにA項目を追加し、引き継ぎフォーマットを更新する。
こちらは、人の意識ではなく、仕組みに向かっています。
この違いが大きいです。
「気をつけます」は対策として弱い
ミス対応でよく出てくる言葉があります。
次から気をつけます 確認を徹底します 注意します 意識します 再発防止に努めます
これらは、言葉としては真面目です。
しかし、対策としては弱いです。
なぜなら、具体的に何が変わるのか分からないからです。
本当の対策は、
- チェック欄を追加する
- フォーマットを変える
- 入力制限をかける
- 色分けする
- 自動チェックする
- ダブルチェックの条件を決める
- 判断者を明記する
- 引き継ぎ項目を固定する
- 期限前アラートを出す
- 作業手順を標準化する
- ミスが起きやすい箇所を見える化する
のように、行動や仕組みが変わるものです。
人間の注意力に頼るのではなく、注意力が落ちてもミスしにくい設計にする。
これが再発防止です。
なぜ職場は人の意識に原因を置きたがるのか
理由はシンプルです。
仕組みを直すより、人を責める方が楽だからです。
仕組みを直すには、
- 手順を変える
- フォーマットを変える
- チェック項目を増やす
- 工数を確保する
- 判断者を決める
- 教育する
- 管理者が責任を持つ
必要があります。
これは面倒です。
しかし、
次から気をつけて 意識を高く持って もっと責任感を持って
なら、すぐ終わります。
だから、なぜなぜ分析は人の意識に落ちやすいのです。
管理側に責任が戻るのを避けるために、人で止める
本気でなぜなぜ分析をすると、責任は管理側・組織側に戻ることがあります。
たとえば、
なぜチェックできなかった? チェック工程がなかったから。 なぜ工程がなかった? 標準化されていなかったから。 なぜ標準化されていなかった? 管理者が作っていなかったから。 なぜ作っていなかった? 工数も責任者も決めていなかったから。
こうなると、管理・設計・教育・工数の話になります。
しかし、そこに行きたくない職場では、途中でこう止めます。
本人の確認不足
これで終わりです。
責任が上に戻らないように、下で止める。
これは責任ロンダリングです。
ミス分析で見るべき項目
ミスが起きたときは、次のように整理するとよいです。
発生したミス: 発生工程: 検知できたタイミング: 本来検知できるべきタイミング: 原因: 個人要因: 仕組み要因: 次回防止策: チェック項目: 引き継ぎに追加する内容: 担当者: 期限:
大事なのは、個人要因と仕組み要因を分けることです。
個人要因の例
- 確認漏れ
- 入力ミス
- 認識違い
- 作業手順の理解不足
仕組み要因の例
- チェック欄がない
- 引き継ぎフォーマットが曖昧
- 判断者が不明
- 期限が見えにくい
- ダブルチェックの基準がない
- 似た案件が混在している
- 作業手順が人によって違う
- 教育が口頭だけ
- ミス事例が手順に反映されていない
このように分けると、個人だけを責めずに済みます。
同じ条件なら他の人でも起きるか
ミス分析でかなり大事な問いがあります。
同じ条件なら、他の人でも起きる可能性があるか?
もし答えがYESなら、それは個人だけの問題ではありません。
仕組みの問題が含まれています。
たとえば、
- チェック欄がない
- 似た入力欄が並んでいる
- 期限が見えない
- 判断者が不明
- 作業量が多すぎる
- 割り込みが多い
- 教育が不十分
- 手順が属人化している
こういう条件があるなら、他の人でも起きます。
この場合、
あの人が悪い
で終わらせると、次の人がまた同じミスをします。
引き継ぎをミス裁判にしない
引き継ぎの目的は、ミスした人を吊るすことではありません。
本来の目的は、
- 次の担当者が困らない
- 情報の抜け漏れを防ぐ
- リスクを共有する
- 進捗を正しく伝える
- 判断が必要な点を明確にする
- 同じミスを防ぐ
ことです。
だから、引き継ぎでミスを扱うなら、次の形にするべきです。
今回、A項目の確認漏れがありました。 原因として、引き継ぎフォーマットにA項目が入っていなかったことがあります。 次回から、A項目をチェック欄に追加します。 また、B条件の場合はリーダー確認を入れる形にします。
これなら再発防止です。
逆に、
Aさんがミスしました。 皆さん気をつけましょう。
だけなら、公開処刑です。
ミスを責めない職場ではなく、ミスを仕組みに変える職場へ
目指すべきは、
ミスを責めない職場
だけではありません。
ミスを完全に見ないと、また同じことが起きます。
目指すべきは、
ミスを仕組みに変える職場
です。
ミスは起きる。
だから、起きたミスを見て、
- どこで起きたか
- なぜ起きたか
- なぜ検知できなかったか
- 次にどう防ぐか
- どの手順に反映するか
- 誰がいつまでに変えるか
まで落とす。
これが本当の再発防止です。
現場で使える言い方
1. 個人追及から仕組みに戻す
個人の注意力だけに原因を置くと再発防止になりにくいので、工程とチェック方法も確認したいです。