夜に団地や公営住宅の近くを歩いていると、ふと思うことがある。
「なんであんなに安いんだろう」
普通の民間賃貸なら、家賃は市場で決まる。
駅から近い。 築年数が浅い。 設備が良い。 人気エリア。 需要がある。 部屋が広い。
こういう条件が揃えば、家賃は上がる。
でも、公営住宅や一部の団地は違う。
同じように人が住む場所なのに、民間賃貸よりかなり安く見えることがある。
なぜか。
かなりシンプルに言えば、
市場価格で貸していないから
である。
公営住宅は「商品」ではなく「生活インフラ」に近い
民間賃貸は、基本的に商品である。
大家や不動産会社が、部屋を貸す。 入居者は、家賃を払う。 家賃は、立地・築年数・設備・需要・周辺相場で決まる。
つまり、市場価格である。
一方、公営住宅は性質が違う。
公営住宅は、住宅に困っている低所得者などに、低廉な家賃で住宅を供給するための制度である。
つまり、公営住宅は単なる不動産商品ではない。
住まいのセーフティネット 生活を維持するためのインフラ 市場家賃では暮らしにくい人のための制度
に近い。
だから、民間賃貸と同じ感覚で見ると、
「なんでこんなに安いの?」
となる。
でも制度の思想としては、
「市場価格で最大利益を取る」 ではなく、 「生活できる家賃で住まいを確保する」
に近い。
家賃は収入に応じて決まる
公営住宅の大きな特徴は、家賃が入居者の収入などに応じて決まることだ。
国土交通省の資料でも、公営住宅の家賃は、入居者の収入、公営住宅の立地条件、規模、建設時からの経過年数などに応じ、近傍同種の住宅の家賃以下で定めるとされている。
つまり、
「近くの民間賃貸がこのくらいだから、この家賃にしよう」
だけではない。
入居者の収入。 建物の規模。 築年数。 立地。 周辺の家賃。
こうした要素を見て、生活に合わせた家賃になる。
だから収入が低い人ほど、家賃は低くなりやすい。
これは、普通の民間賃貸とはかなり違う。
民間賃貸なら、収入が低いからといって家賃が下がるわけではない。 払えないなら借りられないだけである。
でも公営住宅は、制度として収入に応じて家賃が変わる。
ここが安く見える大きな理由である。
所得制限があるから安い
ただし、安いからといって誰でも入れるわけではない。
公営住宅には所得制限がある。
一般的には、入居収入基準として「政令月収」や「所得月額」と呼ばれるものが使われる。
これは手取り月収そのものではない。 額面月収そのものでもない。
ざっくり言えば、
年間所得から各種控除を引いて、12で割った額
である。
そして、公営住宅では原則として、この所得月額が一定以下である必要がある。
よく使われる基準として、
原則階層:所得月額15万8千円以下 裁量階層:所得月額21万4千円以下
といった基準がある。
裁量階層とは、高齢者、障害者、子育て世帯など、自治体や制度上、入居基準が緩和される場合の階層である。
つまり、安い家賃の裏には、
入れる人が限られている
という条件がある。
安い家賃だけを見ると魅力的だが、実際には所得、世帯状況、住宅困窮度、自治体ごとの条件、抽選、空き状況などが関係する。
だから、公営住宅は「安いから誰でも選べる賃貸」ではない。
安い代わりに、制度の対象者が限られている住まい
である。
1K・1DKで満足できるなら、低コスト生活はかなり強い
一人暮らしで、1Kや1DKで十分なら、家賃を下げる効果はかなり大きい。
家賃は毎月固定で出ていく。 ここが軽いと、生活全体が軽くなる。
広い部屋に住む。 新しい部屋に住む。 駅近に住む。 見栄えの良い物件に住む。
それも価値である。
でも、人によっては、そこに大きな価値を感じない。
一人で暮らせる。 寝られる。 風呂に入れる。 ご飯を食べられる。 ネットが使える。 趣味ができる。 生活が回る。
これで十分なら、1K・1DKはかなり合理的である。
家賃を下げた分、
- 貯金
- 投資
- 副業
- 開発
- 趣味
- 旅行
- 休職・転職の余白
- 労働時間を減らす選択肢
に回せる。
つまり、安い住まいは単に「狭い部屋」ではない。
自由を買う装置
にもなる。
安い住まいがある国は、かなりありがたい
公営住宅や団地を見ていると、正直、
「いい国だな」
と思う部分がある。
もちろん、制度には課題もある。
古い。 設備がシンプル。 抽選がある。 入居条件が厳しい。 自治会や近所付き合いがある。 地域差がある。 単身者が入りにくい場合もある。 老朽化や建て替え問題もある。
それでも、家賃がかなり抑えられた住まいがあり、そこで生活している人たちがいる。
働きながら暮らしている。 車を持っている人もいる。 家族を育てている人もいる。 高齢者が暮らしている。 何とか生活を維持している。
これは、かなり大きい。
自己実現や豊かな暮らしとは別である。
公営住宅があるから、すぐ夢が叶うわけではない。 自由に何でもできるわけでもない。 人生が楽勝になるわけでもない。
でも、
住む場所がある 家賃が抑えられる 働いていれば生活を維持しやすい 場合によっては働けない時期でも制度につながれる余地がある 最低限の暮らしを守る土台がある
これはかなり大事である。
自己実現は別問題。 でも、生存や生活維持の土台があるのは強い。
車を持てる人がいるのも、生活防衛力の一部
公営住宅や団地に住んでいる人でも、車を持っている人はいる。
これを見て、
「家賃が安いから車も持てるのか」
と思うことがある。
もちろん、車の所有は地域や収入、家族構成、駐車場代、自治体ルール、個人の支出状況によって変わる。
公営住宅だから必ず車を持てるわけではない。 駐車場の空きや費用、規約もある。
それでも、家賃が抑えられることで、車の維持費に回せる余地が生まれることはある。
地方では車が生活インフラであることも多い。
買い物。 通勤。 通院。 子どもの送迎。 親の用事。 仕事探し。
車があるかどうかで、生活の自由度がかなり変わる。
だから、低家賃の住まいと車が両立している光景を見ると、
「生活の最低限を守る設計として、これはかなり強い」
と感じる。
ただし、安い住まいには同梱物もある
もちろん、公営住宅や団地は良いことばかりではない。
安い住まいには、同梱物がある。
- 所得制限
- 入居条件
- 抽選
- 空き待ち
- 築年数の古さ
- 設備の古さ
- 間取りの制限
- 自治会
- 近所付き合い
- 騒音
- 駐車場問題
- 収入申告
- 収入が上がると家賃が上がる場合
- 収入超過時の退去・明渡し努力義務などの制度
- 単身者が入りにくい場合
- 地域による雰囲気の差
だから、安いから無条件に最高とは言えない。
公営住宅は、民間賃貸とは違う制度住宅である。
自由に選べる商品というより、条件つきの生活インフラである。
そこを理解した上で見る必要がある。
URや公社住宅はまた少し違う
「団地」と言っても、全部が同じではない。
公営住宅。 UR賃貸。 公社住宅。 民間の団地型マンション。
これらは制度が違う。
たとえばUR賃貸住宅は、公営住宅のような低所得者向けの収入連動家賃とは違い、基本的には市場家賃を基準にしている。
ただし、URには礼金・仲介手数料・保証人が不要といったメリットがある場合があり、初期費用を抑えやすい。
また、一部では高齢者世帯等向けの家賃減額制度もある。
つまり、
公営住宅=収入連動・低廉家賃のセーフティネット寄り UR=市場家賃だが、初期費用や契約条件に特徴がある賃貸 公社住宅=自治体や公社による中間的な制度住宅の場合もある 民間団地=普通の民間賃貸
という感じで分けて考えた方がいい。
一言で「団地は安い」と言っても、中身は違う。
民間賃貸との最大の違い
民間賃貸と公営住宅の最大の違いは、目的である。
民間賃貸の目的は、基本的には不動産を貸して収益を得ること。
もちろん、良心的な大家もいる。 地域密着の不動産会社もある。 住みやすい物件もある。
でも市場の仕組みとしては、家賃は需要と供給で決まる。
一方、公営住宅は、住宅に困っている人の生活を支えることが目的である。
だから、同じ「家を貸す」でも目的が違う。
民間賃貸は、住まいの商品。 公営住宅は、住まいのセーフティネット。
ここが違う。
生活維持価格という考え方
公営住宅や団地の安さを一言で言うなら、
生活維持価格
だと思う。
市場が決めた最大価格ではない。 住む人が生活を維持できる価格。
もちろん、制度上はもっと細かい家賃算定がある。 収入、立地、規模、築年数、周辺家賃などが関わる。
ただ、感覚としては、
暮らしが壊れないようにする価格
に近い。
市場価格の住まいは、便利だが高い。 生活維持価格の住まいは、制約はあるが軽い。
どちらが良いかは、人による。
でも、自由や低ストレスを重視する人にとって、家賃を下げられる選択肢はかなり強い。
低コスト住宅は、人生の選択肢を増やす
家賃が低いと、人生の選択肢が増える。
たとえば、
- 少ない収入でも生活できる
- 仕事を選びやすくなる
- 転職のリスクを取りやすくなる
- 休む余白が増える
- 副業や勉強に時間を使いやすくなる
- 投資や貯金に回せる
- 無理な昇進や残業に依存しにくくなる
- 嫌な環境から抜ける準備がしやすくなる
これはかなり大きい。
高い家賃は、会社への依存を強める。 低い家賃は、選択肢を増やす。
だから、1K・1DKで満足できる人にとって、低コスト住宅はかなり相性がいい。
広い家より、自由。 新築より、固定費の軽さ。 見栄より、生活防衛力。
こういう価値観なら、かなり強い。
ただし、自己実現とは別
ここは大事である。
公営住宅や低家賃住宅があるからといって、それだけで自己実現できるわけではない。
安い家に住める。 生活は維持できる。 家賃の負担は軽い。
でも、
- 仕事の満足
- 創作
- 恋愛
- 自由
- キャリア
- 趣味
- 人間関係
- 将来の夢
- 自己実現
はまた別である。
低家賃住宅は、人生を自動で良くしてくれる魔法ではない。
ただし、
人生を壊さないための土台
にはなる。
生存と自己実現は違う。
でも、生存が安定しないと、自己実現どころではない。
だから、低家賃の住まいは地味だが重要である。
「働きさえすれば何とかなる」は、かなりありがたい
社会の良さは、こういうところにも出る。
全員が高収入でなくてもいい。 全員が起業しなくてもいい。 全員が大成功しなくてもいい。
普通に働いて、普通に暮らせる。 あるいは、病気や事情で働けない時期にも、制度につながれば最低限を守れる可能性がある。
これはかなりありがたい。
もちろん、現実には制度の隙間もある。 生活保護や公営住宅にも課題はある。 申請のハードル、地域差、偏見、空き不足、単身者の入りにくさ、老朽化などもある。
でも、完全な自己責任社会よりは、はるかにマシである。
住まいのセーフティネットがあるということは、
落ちても即終了ではない
ということだ。
これは、社会としてかなり重要である。
一人暮らし・自由重視なら、家賃を下げる価値は高い
一人暮らしで、自由を大事にする人にとって、家賃を下げる価値は高い。
広い部屋が必要ない。 子ども部屋もいらない。 大きい家具もいらない。 見栄のための家もいらない。 生活が回ればいい。
そういう人なら、1Kや1DKで十分なことがある。
もちろん、人によっては広さが必要である。 在宅仕事のスペースがいる人もいる。 家族がいる人もいる。 趣味の道具が多い人もいる。
でも、一人で身軽に生きられる人なら、狭さはそこまで問題にならない。
むしろ、家賃の軽さが自由になる。
固定費を下げることは、人生の主導権を取り戻すこと
でもある。
まとめ:公営住宅や団地が安いのは、生活を守るための価格だから
公営住宅や一部の団地が安く見える理由は、市場価格で貸していないからである。
民間賃貸は、需要と供給で家賃が決まる商品。 公営住宅は、住宅に困る人の生活を支えるセーフティネット。
家賃は入居者の収入、住宅の規模、築年数、立地などをもとに決まる。 所得制限や入居条件もある。 誰でも自由に入れるわけではない。
だから安い。
その安さの裏には制約もある。
でも、それでも、
住む場所がある。 家賃が軽い。 働きながら生活できる。 場合によっては、働けない時期でも制度につながれる余地がある。 低コストで生活を維持できる。 車を持ちながら暮らしている人もいる。 家族を育てている人もいる。
これはかなり大きい。
自己実現は別である。 自由や夢や創作やキャリアは、また別に作る必要がある。
でも、生活の土台が壊れないことは、それだけで価値がある。
公営住宅や団地の安さは、ただの安売りではない。
市場価格ではなく、生活維持価格の住まい。
そう見ると、かなり良い国の仕組みに見えてくる。
もちろん、課題はある。 制約もある。 誰でも入れるわけではない。
それでも、住まいのセーフティネットがあることは強い。
落ちても即終了ではない。 働けば何とか生活を維持できる。 事情があっても制度につながれる可能性がある。
それは、社会としてかなり大事な土台である。