子どもを持つ・持たないをどう決めるか――日米データと不可逆な選択の判断基準

子どもを持つかどうかに、誰にでも当てはまる正解はない。

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子どもを持つかどうかに、誰にでも当てはまる正解はない。

親になって大きな意味を感じる人もいる。子どもを持たず、自由、仕事、創作、友人、夫婦関係を中心に充実した人生を作る人もいる。

研究も、「親は必ず幸福」「子どもを持たないと必ず後悔」という単純な結論を支持していない。親と非親の幸福差は、年齢、所得、支援制度、仕事と家庭の衝突、子どもの状況、本人の希望などで変わる。[3][14][15]

したがって、判断すべきなのは一般論ではない。

自分はどちらの生活を望み、どちらの損失を引き受けられるか。

日本では「子どもはいらない」は珍しい回答ではない

国立社会保障・人口問題研究所の第16回出生動向基本調査は2021年に実施された。

未婚回答者の希望子ども数では、全体の23.4%が「子どもはいらない」と回答した。女性23.6%、男性23.2%で、男女差はほとんどなかった。[5]

一方、1人以上を希望する回答では2人が51.7%と最多だった。[5]

この結果から分かるのは、日本社会が一つの方向へまとまっているわけではないことだ。

  • 子どもを持たない意思がある人
  • 子どもを望むが条件が整わない人
  • 二人以上を望む人
  • まだ決めていない人

が同時に存在している。

また、第16回調査では平均希望子ども数が男性1.82人、女性1.79人へ低下し、「結婚したら子どもを持つべき」への支持も大きく低下した。[1]

少なくとも、「日本では全員が本心では子どもを望んでいる」とは言えない。

米国では若い非親の「欲しくない」が主要理由になっている

Pew Research Centerが2024年に実施した全国調査では、子どもがなく、将来持つ可能性が低い18~49歳の57%が、「単に子どもを欲しくない」ことを主要な理由とした。[4]

ほかの主要理由は次のとおりである。

  • 仕事や関心など、ほかのことへ集中したい:44%
  • 世界の状況への懸念:38%
  • 子どもを育てる費用を負担できない:36%
  • 環境・気候変動への懸念:26%
  • 子どもがあまり好きではない:20%

同調査では、50歳未満のこの集団の71%が、「充実した人生を送れるかどうかは、子どもの有無とあまり関係がない」と回答した。[16]

米国は個人の選択を言語化しやすい文化的傾向があるが、費用、世界情勢、仕事との両立といった構造要因も大きい。日本と同様、「価値観」と「条件」の両方が存在する。

日米の違いを単純化してはいけない

「日本は同調圧力、米国は自由」とだけまとめるのは不正確である。

日本でも伝統的規範への支持は低下し、子どもを望まない回答は明確に存在する。米国でも家族、宗教、地域、政治的価値観による圧力があり、子どもを持たない人への偏見がなくなったわけではない。

一方で、言葉の使われ方には差がある。

米国ではchildfreeという、子どもを持たないことを積極的な選択として表す語が広く使われる。ただし、Pewは2024年報告で、childlessとchild-freeのどちらも一括呼称には使わず、“adults who don’t have children”という記述的表現を採用した。[17]

理由は、子どもがいない人の中に、望んで選んだ人、望んだが実現しなかった人、未定の人が含まれるからである。

日本語でも「子なし」と一括りにせず、少なくとも次を分けた方がよい。

  • 自ら子どもを持たないと決めた
  • 持ちたかったが持たなかった、または持てなかった
  • 現時点では持っていない
  • 意思が未確定である

立場が違えば、支援も感情も異なる。

「欲しい/いらない」は四象限で考えると分かりやすい

判断では、内的意思と外的条件を分ける。

条件が整っている 条件が整っていない
親になりたい 持つことを具体的に検討できる 条件改善、延期、代替手段を検討する
親になりたくない 持たない意思がより明確 条件問題と誤認せず、持たない選択を守る

最も見落とされやすいのは右下である。

条件も悪く、本人も望んでいないのに、「お金があれば欲しいのかもしれない」「良い相手なら変わるかもしれない」と、環境問題だけに置き換えてしまう。

そこで、仮定を使う。

十分な収入がある。
住居も保育もある。
信頼できる相手が育児の半分以上を担う。
それでも、自分は親になりたいか。

ここで「欲しい」なら条件付きの希望である。

「それでも特に欲しくない」なら、価値観として持たない可能性が高い。

「断る理由がなくなるだけ」であれば、積極的に望んでいるとは言えない。

不可逆な決定では「明確な肯定」を必要条件にする

子どもを持つ決定は、非対称である。

持たない決定には、一定期間、再検討できる余地がある。年齢や身体条件による限界はあるが、少なくとも今日決めて明日必ず永久確定するわけではない。

一方、子どもが生まれれば、「やはり親ではない人生へ戻る」はできない。養子縁組などの制度があっても、それは決定を無害に取り消すボタンではない。

したがって、不確実なときに安全側を取るなら、迷っている間は進まないが合理的である。

これは臆病ではない。不可逆性と、第三者である子どもの利益を考慮した判断である。

二人の意見が割れた場合、妥協は成立しない

子どもを持つかどうかは、「一人なら中間」という問題ではない。

一人の子どもでも親役割は発生する。妊娠・出産の身体負担は分割できない。親子関係は片方だけが参加しないことを前提に設計できない。

基本原則は次のとおりである。

子どもを持つには二人の明確な賛成が必要。
一人の反対、または重大な迷いがあるなら進めない。

相手を愛しているから譲る、という発想は危険である。譲った側の後悔だけでなく、望んだ側が想定より負担を担わない問題、子どもが歓迎されていないと感じる問題へつながる。

両者の希望が変わらないなら、それは会話不足ではなく、関係の根本的不一致である可能性がある。

判断前に確認する12の質問

意思

  1. 誰にも期待されていなくても、親になりたいか。
  2. 赤ちゃんではなく、成人までの養育を望んでいるか。
  3. 子どもが自分と異なる性格・価値観でも関係を続けたいか。
  4. 子どもから感謝されなくても責任を果たせるか。

日常

  1. 睡眠、自由時間、支出、仕事の柔軟性が減ることを受け入れられるか。
  2. 平日の反復作業を誰が担うか、時間単位で合意できているか。
  3. 子どもの病気や学校対応で、どちらの仕事を調整するか決めているか。
  4. 祖父母の無償労働を前提にせず回るか。

リスク

  1. 離婚、失職、病気が起きても最低限の養育を続けられるか。
  2. 障害、慢性疾患、不登校など、標準モデルから外れた場合も支援する意思があるか。
  3. 相手の約束が守られない場合、どこまで自分が担えるか。
  4. 後悔したとき、その感情を子どもへ請求しない仕組みがあるか。

すべてに自信を持つ必要はない。未来を完全に予測することもできない。

しかし、答えにくい問いを「産めば何とかなる」で飛ばさないことが重要である。

子どもを持たない人生にも設計が必要である

子どもを持たない選択は、何もしないことではない。

長期的には次の設計が必要になる。

  • パートナー、友人、地域との関係をどう維持するか
  • 老後の住居と介護をどう確保するか
  • 資産と医療意思決定をどう管理するか
  • 仕事以外の意味や共同体をどう作るか
  • 親族からの期待にどう境界を引くか

Pewの調査では、子どものいない50歳以上の35%が老後の資金、26%が介護者の確保、19%が孤独を非常に頻繁に心配していた。[16]

ただし、親にも老後資金や孤独の問題はあり、子どもが介護する保証はない。子どもを老後保障として持つのではなく、どちらの人生でも自立した備えが必要になる。

幸せは「子どもがいるか」だけでは決まらない

親であることの幸福研究は、結果が一様ではない。

  • 親と非親の生活満足度に大差がない研究
  • 親に意味や目的の上昇がある研究
  • 親の方がストレスや夫婦満足度低下を経験する研究
  • 家族政策が充実した国ほど親の幸福不利が小さいという研究

が併存する。[3][9][14][15]

このばらつきは当然である。

望んで親になり、支援があり、負担を公平に分けられる人と、望まず親になり、孤立し、負担を一人で抱える人を、同じ「親」として平均しているからだ。

本当に重要なのは、親か非親かというラベルではない。

自分の価値観と選択が一致しているか、その生活を支える条件があるか、他者へ負担を押しつけない仕組みがあるかである。

結論――「どちらが正しいか」ではなく「どちらを自分で選ぶか」

子どもを持つ人生も、持たない人生も、損失がある。

親になれば、自由、時間、金銭、身体、仕事の選択肢の一部を失う。その代わり、深い関係、意味、経験を得る可能性がある。

子どもを持たなければ、親子関係という経験を持たず、将来それを惜しむ可能性がある。その代わり、時間、資源、移動性、別の関係や活動へ投資できる。

完全に損のない道はない。

だからこそ、他人に正解を決めてもらってはいけない。

親が安心するか。
世間から普通に見えるか。
配偶者が失望しないか。
それらを考える前に、自分はその日常を生きたいか。

人生の重大な選択で自分軸を持つことは、自己中心性ではない。

結果を引き受ける本人と、選択権を持たない子どもの双方を守るための、最低限の責任である。

FAQ

子どもを持たないと、老後に必ず後悔しますか

必ずではない。持たなかったことを後悔する人も、親になったことを後悔する人も、選択に満足する人もいる。将来感情を確実に予測することはできないため、現在の意思、条件、不可逆性から判断する必要がある。

経済的に余裕ができれば、欲しくなるものですか

条件不足で諦めている人には影響する。しかし、親役割自体を望まない人の価値観が、所得だけで変わるとは限らない。条件と本心を分ける必要がある。

迷っているうちに年齢的な期限が来たらどうしますか

期限の存在は重要だが、焦りは「親になりたい」という意思の代わりにはならない。妊娠可能性、医療、養子・里親などの選択肢を早めに調べつつ、期限だけを理由に不可逆な決定をしないことが重要である。

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