皇帝を殺したいだけなら、ギアスは暗殺向きである
ルルーシュのギアスは、本来かなり暗殺向きである。
相手に直接命令できる。
一度だけとはいえ、命令の強度は高い。
軍人、役人、警備兵、搭乗員、側近などをリレーすれば、皇帝のいる場所へ近づくルートは作れそうに見える。
たとえば理屈だけなら、こういうことも考えられる。
- 通行許可を出させる
- 本国行きの便に乗せてもらう
- 警備網を通過する
- 謁見を手配させる
- 目的地まで案内させる
だから、「皇帝陛下に会いたい」「ぶっ殺したい」だけなら、黒の騎士団を作るより、本国潜入を考えてもよさそうに見える。
ではなぜ、ルルーシュはそうしなかったのか。
ルルーシュの目的は皇帝殺害ではなく、ナナリーの安全保障である
答えは、ルルーシュの目的が「皇帝を殺す」だけではないからである。
ルルーシュの根本目的は、ナナリーが安全に生きられる世界を作ることだ。
皇帝だけ殺しても、ブリタニア帝国は残る。
- シュナイゼルがいる
- コーネリアがいる
- 他の皇族がいる
- 貴族階級がいる
- 軍部がいる
- 植民地支配システムが残る
皇帝暗殺に成功しても、ルルーシュとナナリーが安全になるとは限らない。
むしろ、皇帝暗殺犯として追われ、ナナリーが人質や処分対象になる可能性が高い。
つまり、暗殺だけではナナリーを守れない。
皇帝を殺すより、皇帝が作った世界を壊す必要があった
ルルーシュが本当に壊したかったのは、皇帝個人だけではない。
皇帝が支配するブリタニアの世界そのものである。
ナナリーが危険なのは、皇帝がいるからだけではない。
ナナリーが皇族の血筋であり、政治利用される価値を持つから危険なのだ。
ルルーシュを動かす急所として使われるから危険なのだ。
ブリタニアの権力構造の中にいる限り、誰かの駒になる可能性があるから危険なのだ。
だから、ルルーシュは単なる暗殺者では足りない。
世界を動かす必要があった。
そのために、ゼロという仮面が必要だった。
黒の騎士団という組織が必要だった。
日本人の支持が必要だった。
ブリタニアに対抗する外部権力が必要だった。
暗殺者なら楽だった。革命家になったから地獄になった
もしルルーシュが皇帝を殺すだけの暗殺者なら、物語はもっと単純だったかもしれない。
しかしルルーシュは、ナナリーのために世界の構造を変えようとした。
だから革命家になった。
革命家になると、犠牲が出る。
組織を持つと、部下が死ぬ。
大義を掲げると、本音を隠す必要がある。
ゼロという記号になると、ルルーシュ個人の感情は捨てなければならない。
ユフィ事件後、ルルーシュがユフィの名誉を弁明できなかったのも、その延長である。
暗殺者なら、真実を抱えて逃げてもよかった。
しかし革命家ゼロは、ユフィの死すら大義に変えなければならなかった。
ここがルルーシュの重さである。
