ユフィ事件は、ユフィ本人だけの悲劇ではない。
周囲の人間が何を見て、何を失い、どう反応したかによって、キャラクターの本質が見える。
まずスザクである。
スザクは、もともと死にたがりすぎる。
父親を殺した罪、自分が日本を裏切ったような結果になった矛盾、正しい手段で変えたいという強迫、そして自分の命を何かに差し出すことで償いたいという感覚がある。
彼は勇敢というより、かなりの割合で死に場所を探している。
そこへルルーシュの「生きろ」ギアスが入っている。
この命令自体は、悪ではない。
死にたがりのスザクに対して、生きろ、死んで償うな、罪を抱えてでも生きろ、という意味なら救いでもある。
しかしギアス世界では、それが本人の意思を上書きする強制命令になる。
しかもスザクは最前線にいる軍人であり、ランスロットのパイロットであり、自己犠牲判断をしやすい人間である。
そこへユフィの虐殺命令が重なる。
ユフィにとってスザクは、大切な人であり、騎士にしたい人であり、日本人とブリタニア人が一緒に生きる象徴だった。
しかしギアス命令が入った瞬間、スザクは「スザク」ではなく、「日本人カテゴリの一体」として処理される。
本来なら、スザクはユフィに撃たれた時点で心が止まってもおかしくない。
しかし「生きろ」が発動する。
スザクは生還する。
絵面だけ見ると、ユフィに「お前は日本人だったな」と認識され、銃撃され、それでも生き残るというかなり強烈な場面である。
助かってよかった、とは言える。だが同時に、スザクは見なくていい地獄を見ることになる。
次にコーネリアである。
コーネリアは、敵側の大軍指揮官としてはかなりまともである。厳しいが、責任から逃げない。指揮系統も明確で、部下も使える。感情だけで動くタイプではない。
しかしユフィに関しては、完全に姉である。
行政特区日本を発表された時、コーネリアが怒るのは当然だ。
ユフィは、事前相談なしで、国家統治方針を、公開の場で、本番リリースしたようなものだからである。
しかも、皇位継承権まで捨てる。
コーネリア視点では、これは妹が皇族としての将来を降り、ブリタニア統治の根幹を揺るがす政策を、姉に相談せず発表したということである。
怒る。胃が死ぬ。
だがそれでも、ユフィが本気なら守るしかない。
そして、その直後にユフィは虐殺皇女になる。
コーネリアにとっての地獄は多重である。
- 大事な妹を失う
- 妹の名誉が虐殺皇女として汚される
- エリア11統治が崩壊する
- 自分は総督としても姉としても守れなかった
- ゼロへの憎しみが決定的になる
しかもコーネリアは、ユフィがそんなことをする子ではないと一番よく分かっている側である。
しかし世間には分からない。
ユフィは虐殺皇女として刻まれる。
コーネリアは、大切な妹を世界に奪われた。
次にシュナイゼルである。
シュナイゼルは、普段は驚くほど冷静である。2期では特に、ほとんど動揺しない人物として描かれる。
だから1期のこの事件で、シュナイゼルが動揺するのは少し意外にも見える。
しかし、これはさすがに予想外である。
シュナイゼルが想定できるのは、ゼロが特区を政治利用する、黒の騎士団が反発する、軍部が暴走する、日本人側に過激派が出る、ユフィが暗殺される、式典がテロられる、といった範囲だろう。
だが実際に起きたのは、ユフィ本人が突然日本人虐殺を命じる、という合理の外側の現象である。
シュナイゼル視点でも、ユフィの人格は分かっている。ユフィがそんなことをする理由がない。政治的にも損しかない。特区という強いカードが、一瞬で虐殺事件に反転する。
だからシュナイゼルですら、「何が起きた?」となる。
彼は人間を盤面として扱う冷たい合理主義者である。しかし、盤面そのものが意味不明に壊れると動揺する。
最後にシャルルである。
シャルルの大爆笑は、異常である。
ユーフェミアが日本人虐殺を命じ、行政特区日本が崩壊し、エリア11が燃え、皇族の名誉が地に落ちる。その状況で笑う。
普通の父親、普通の皇帝、普通の政治家なら、少なくとも一瞬は驚く。損得を計算する。被害を考える。
しかしシャルルは笑う。
これは、彼が人間の悲劇として見ていないからだろう。
人間社会の醜さ、人は争うという構造、歴史の混沌、そういうものを上から見ている。
シャルルにとって、ユフィ個人の善意や悲劇は中心ではない。人間というものの愚かさや争いが露出したことを、どこかで面白がっているように見える。
この比較によって、シュナイゼルが少しまともに見えてしまうのも怖い。
シュナイゼルは冷たい。だが、まだ盤面が壊れたことには反応する。シャルルは、盤面が壊れること自体を笑う。
つまり、
- ルルーシュは罪悪感で処理落ちする
- スザクは生きろギアスで生還して地獄を見る
- コーネリアは姉として妹を失う
- シュナイゼルは合理の外側で動揺する
- シャルルは人間の悲劇を笑う
この事件は、全員の本質をあぶり出す。
この記事のまとめ
- スザクは死にたがりだが、「生きろ」ギアスにより地獄を見ながら生還する。
- コーネリアは総督としても姉としても、ユフィを守れなかった悲劇を背負う。
- シュナイゼルは冷静だが、ユフィ本人の虐殺命令という合理外の現象には動揺する。
- シャルルはユフィ事件を人間の悲劇としてではなく、上位視点の混沌として笑っているように見える。
- ユフィ事件は、周囲の人物の本質を一気に露出させる分岐点である。
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