要約・結論
新卒の定着率が高い会社でも、新人の成長が遅く、経験者が仕事を抱え続け、特定部署だけ入れ替わりが激しいことはある。人を残す力と、人を早く育てて仕事を移す力は別の能力だからである。
「新人にできる仕事がない」の正体
両方の正社員が忙しいのに「新人へ渡せる仕事がない」と言うなら、本当に仕事がないのではなく、仕事を分解できていない可能性が高い。業務は少なくとも次の層へ分けられる。
- 資料収集、入力、整形
- 過去事例の検索
- 初稿・議事メモ作成
- チェックリストによる一次確認
- 定型連絡
- 例外判断
- 最終承認
新人へ最初から最終判断を渡す必要はない。定型部分と初稿を任せ、経験者は判断・レビューへ集中すればよい。隣で説明しながら成果物を作らせれば、教育と実務を同時に進められる。
定着率だけでは育成を測れない
新人適応のメタ分析では、役割明確性、自己効力感、社会的受容が、満足度、成果、定着意向などと関係する。[R8] 人間関係が穏やかで、待遇が地域内で悪くなく、同期がいれば、育成速度が遅くても新人は残り得る。
厚生労働省による2022年3月卒業者の3年以内離職率は、大卒33.8%、高卒37.9%である。[R10] これより低い会社は定着面で強みを持つ可能性がある。しかし、その事実だけでは、独力化の速さ、仕事の移管、経験者の負荷までは分からない。
移管を測る指標
- 配属から独力化までの期間
- 新人へ移した業務数
- レビュー時間の推移
- 部署別・雇用区分別の離職率
- 特定社員への業務集中度
- 手順書・教育資料の更新頻度
結論
人を残す力はあるが、人を育てて仕事を手放す力が弱い会社は存在する。 ゆるやかな文化は定着に役立つ。しかし、仕事を分解・標準化・移管しなければ、経験者は永遠に「自分でやった方が早い」状態から抜けられない。
