念能力が厄介すぎる世界で、ハンター制度とゾルディック家が成立している怖さ

イルミの針、キルアの失格、ハンターライセンスの紛失率、ゾルディック家の支配OS、アルカ/ナニカの治療ルールから、HUNTER×HUNTER世界の怖さを整理する。

読書機能の使い方

聴く:本文を読み上げます。速読:語句を順に表示し、速さを調整できます。語学練習:別の言語版と対訳を読み比べます。保存:このブラウザーにブックマークし、プレイヤーの保存済み一覧から開けます。

この記事をシェア
広告
広告

HUNTER×HUNTERを見返していると、最初は「強いやつが強い漫画」に見える。

でも、念能力が出てきた後にハンター試験やゾルディック家を見ると、かなり印象が変わる。

特にキルア周りはそうだ。

最終試験でボドロを殺した件も、初見だと「キルアが暗殺者として壊れた」に見える。けれど後からイルミの針を知ると、あれは単なる精神論ではなく、かなり具体的な念による行動誘導だった可能性が高くなる。

普通の催眠なら根拠が怪しい。

でも念がある世界では、話が変わる。

普通の催眠なら怪しい。でも念の針なら話が変わる

ハンター試験の最終試験で、キルアはイルミと対面した後に崩れる。

その後、ボドロを殺して失格になる。

表向きは、イルミの言葉でキルアが揺さぶられたように見える。実際、2011年版アニメ第20話では、ゴンがサトツから「イルミとの対決時のキルアの様子」を聞く流れになっている。

ただ、後のキメラアント編を見ると、これはかなり意味が変わる。

第94話では、ラモットと対峙したキルアが「勝てない戦いはするな」と教育されてきたこと、そしてイルミの声が頭から離れず「逃・ゲ・ロ…。」と迫ってくることが描かれる。^1

さらに設定上も、キルアはイルミが脳に埋め込んだ針によって、勝てる確信がない戦いから逃げるように強制されていたと整理されている。[^2]

つまり、ボドロ殺害はこう見るとしっくりくる。

  • イルミがその場で「ボドロを殺せ」とリモコン操作したわけではない
  • でもイルミの針と暗殺者教育が、キルアの判断ルールを歪めていた
  • 最終試験から降りる最短手段として、キルアは「殺したら失格」を選ばされた

直接殺したのはキルア。

でも、その状態を作ったのはイルミ。

この構図がかなり怖い。

念能力が厄介なのは、単純な攻撃力ではなく、本人の判断・恐怖・行動選択にまで入り込んでくるところだ。

ハンターライセンスは、資格というよりバグ権限カード

ハンター試験が異常に厳しい理由も、ライセンスの権限を見ると納得しやすい。

ハンターライセンスは、単なる身分証ではない。

売れば少なくとも数十億ジェニー級の価値があり、紛失・盗難されても再発行されない。さらに、一度合格した者は再受験できない。統計上、ハンターの5人に1人は取得から1年以内にライセンスを失うとされている。[^3]

5人に1人は草である。

これだけの権限カードを1枚の物理カードとして持たせる世界、管理が荒すぎる。

ただ、HUNTER×HUNTER世界ではそれも妙に納得できる。

ライセンスを持っていれば、普通の人間が入れない場所に入れる。情報にもアクセスできる。信用も得られる。金融的な価値もある。

つまりハンターライセンスは、国家資格というより、世界規模のVIPパス兼金融資産兼情報アクセス権である。

そりゃ盗まれる。

そりゃ売られる。

そりゃライセンス狩りも成立する。

ゾルディック家に頼んでも期待値プラスになりそうなのが嫌

このライセンス価値を考えると、かなり嫌な考えが浮かぶ。

ハンターライセンスを持っている新人を狙って、ゾルディック家に強奪を依頼しても、期待値プラスになりそうなのだ。

もちろん、ゾルディック家への依頼費は高い。ミルキが15人殺害で巨額の報酬を受け取った例もあるため、暗殺一家としての単価はかなり高いと見ていい。

それでも、ライセンスが数十億ジェニー級の価値を持つなら、条件によってはビジネスとして成立しかねない。

ただし、期待値以前に問題がある。

ゾルディック家と関わりたくなさすぎる。

  • 依頼者の素性を知られる
  • 失敗した時に揉める相手が最悪
  • イルミみたいな倫理観の人間がいる
  • 家族内の地雷が多すぎる
  • 仕事外で巻き込まれる可能性が怖すぎる

「使えば勝てるけど、電話番号を知りたくない業者」みたいな一家である。

ライセンス狩りとしては高性能な外注先だが、関係コストがマイナス無限大に近い。

ゾルディック家は、父と祖父はまともそうに見える

ゾルディック家の中で、シルバとゼノはかなりまともに見える。

もちろん職業倫理として殺し屋をやっている時点で、一般倫理ではまともではない。

ただ、キルアに対する距離感だけで見ると、母キキョウや兄イルミよりはかなり話が通じる。

ゼノは仕事と私情の線引きがある。

シルバも、キルアを呼び出して「友達に会いたいか?」と聞き、キルアが正直に会いたいと答えると、ゴンたちのもとへ行くことを許す。アニメ第24話の公式あらすじでも、その流れが確認できる。[^4]

ここだけ見ると、シルバは反省したように見える。

でも、完全に自由を認めたわけではない。

シルバの怖さは、キルアを外へ出したうえで「いずれ帰ってくる」と見ているところにある。

つまりこれは、支配をやめたというより、支配の方法を変えたようにも見える。

キキョウやイルミは、今すぐ戻そうとする。

シルバは、一度外に出して、いずれ戻ると見ている。

この違いだ。

母と兄が、ゾルディック家の支配OS

問題は母と兄である。

キキョウとイルミは、キルアを「一人の人間」として見るより、ゾルディック家の後継者・最高級人材として見ている感が強い。

イルミは分かりやすい。

キルアに針を埋め込み、恐怖と逃走の判断ルールを仕込む。

キルアが友達を作ることも、外の世界で自由に生きることも、イルミにとっては許容しにくい。

母キキョウも、愛情が支配に近い。

心配しているようで、実態は「才能ある子を家の中に置いておきたい」という所有感が強い。

ゾルディック家の怖さは、家族が全員悪人というより、愛情・家業・支配・才能管理が全部混ざっているところだ。

「殺し屋一家だから怖い」だけではない。

「家族だから支配する」が怖い。

キルアは最終的に帰るかもしれない。ただし従属ではない

シルバの「いずれ帰ってくる」は、完全には外れない気もする。

キルアはゾルディック家を完全に切り捨てるタイプではない。

アルカ/ナニカのこともある。

むしろ最終的にキルアがゾルディック家の“長”のような立場になる可能性はかなりある。

ただしそれは、暗殺業の後継者として従属する形ではない。

どちらかというと、家の暴走を管理する側だ。

  • アルカ/ナニカをイルミや母に利用させない
  • ゾルディック家の危険物管理をする
  • 家族と外の世界の境界を決め直す
  • 家のルールを自分のルールで上書きする

この方向なら、キルアが「家に戻る」展開もかなりしっくりくる。

家を継ぐというより、家を制御する。

暗殺一家の当主ではなく、ゾルディック家という危険なシステムの管理者になるイメージだ。

アルカ/ナニカの治療は、通常ルールと違う

アルカ/ナニカは、ゾルディック家の中でもさらに別格の危険物である。

通常のお願いは、叶えた後の「おねだり」が重くなり、失敗すると周囲を巻き込む。だから家族が恐れるのも分かる。

ただし、治療系のお願いは別枠っぽい。

ゴンを治す場面では、キルアがアルカ、正確にはナニカに禁断の「おねがい」をする流れが第145話で描かれる。[^5]

治療系は、対象に直接触れる必要があり、治療後はアルカが疲れて眠る。通常の願いのような残酷な反動がない、または少なくとも非常に小さいものとして整理されている。[^6]

つまり、ナニカは単なる万能願望機ではない。

ルールがある。

しかもキルアだけは、そのルールの外側から「命令」できるように見える。

これがあまりにも危険すぎる。

アルカ/ナニカを本当に守れるのはキルアだけ。

同時に、アルカ/ナニカをめぐってゾルディック家を止められるのもキルアだけ。

だからキルアは、家から逃げた少年でありながら、最終的には家の中心問題に戻らざるを得ない気もする。

念能力は、戦闘技術ではなく社会のバグ

念能力の厄介さは、殴る・飛ばす・守るだけではない。

イルミの針のように、判断に介入できる。

ナニカのように、現実を改変するような願いを叶える存在もいる。

メルエムの円に至っては、もはや探知というより支配システムに近い。薔薇後のメルエムは、プフ由来の能力と自身の円を組み合わせ、オーラを光子のような微粒子にして周囲へ展開できると整理されている。[^7]

このレベルまで行くと、念は戦闘能力ではない。

監視、感情解析、情報収集、洗脳、治療、契約、強奪、支配まで含む個人兵器である。

キメラアント編の緊張感も、ここにある。

ネテロの百式観音ですら、王には決定打にならない。第126話では、ネテロの百式観音が王を叩き潰すように連打しても、王自身はほとんど無傷で反撃に移ると紹介されている。[^8]

人類側の武の天井を出しても、まだ足りない。

だからキメラアント編はずっと緊張する。

強敵バトルではなく、生物災害・念災害・人間社会の悪意が全部混ざっているからだ。

まとめ:HUNTER×HUNTERの怖さは「強いやつがいる」だけではない

HUNTER×HUNTERの世界は、強いやつが多い。

でも本当に怖いのは、強さそのものではない。

念能力があることで、社会制度も、家族関係も、資格も、犯罪も、全部が別の意味を持つ。

ハンターライセンスはただの資格ではなく、世界規模の権限カードになる。

イルミの針は、ただの洗脳ではなく、本人の判断ルールに食い込む念の首輪になる。

ゾルディック家は、ただの殺し屋一家ではなく、才能ある子どもを家業と愛情で囲い込む支配システムになる。

アルカ/ナニカは、便利な回復能力ではなく、家族全体の力関係を変える危険物になる。

そしてキルアは、そこから逃げた少年でありながら、最終的にはそのシステムを管理する側に立つ可能性がある。

念能力、厄介すぎる。

でもその厄介さがあるから、HUNTER×HUNTERはただのバトル漫画ではなくなる。

強さではなく、ルール、制度、家族、欲望、支配の漫画になる。


公開時メモ

  • 公開可否:公開可。ただし考察部分は「説」「可能性」と明記する。
  • 注意点:ゾルディック家・イルミ・キキョウ周りは断定しすぎず、「支配OS」「管理者説」として扱う。
    • 念能力が厄介すぎる理由|イルミの針・ハンターライセンス・ゾルディック家から見るHUNTER×HUNTER
    • キルアはなぜボドロを殺したのか|イルミの針とゾルディック家の支配OSを考える
    • アルカ/ナニカを守るキルアは、最終的にゾルディック家を管理するのか

関連記事導線

  • ヒソカは最強厨ではなく「ちょうどいい相手専門店」説
  • トンパは雑魚ではなく、ハンター試験に30回以上生き残るサバイバー説
  • ネテロのボール取りゲームは、人類最強格が序盤から混ざっていた伏線だった話

参考資料(1件)

[^2]: Hunterpedia「Killua Zoldyck」。イルミがキルアの脳に針を埋め込み、確実に勝てない戦闘から退くよう強制していたことが整理されている。https://hunterxhunter.fandom.com/wiki/Killua_Zoldyck [^3]: Hunterpedia「Hunter License」。ライセンスの価値、紛失・盗難時の再発行不可、取得1年以内に5人に1人が失う統計が記載されている。https://hunterxhunter.fandom.com/wiki/Hunter_License [^4]: 日本テレビ『HUNTER×HUNTER』第24話「ゾルディック×ノ×カゾク」公式あらすじ。シルバがキルアに友達に会いたいか尋ね、キルアがゴンたちのもとへ行くことを許される流れが記載されている。https://www.ntv.co.jp/hunterhunter/story/024.html [^5]: 日本テレビ『HUNTER×HUNTER』第145話「カンパイ×ト×サイカイ」公式あらすじ。ゴン専用病院でアルカが目覚め、キルアがナニカへ禁断の「おねがい」をする流れが記載されている。https://www.ntv.co.jp/hunterhunter/story/145.html [^6]: Hunterpedia「Nanika」。治療系のお願いには通常の願いと異なるルールがあり、直接接触や治療後の消耗などが整理されている。https://hunterxhunter.fandom.com/wiki/Nanika [^7]: Hunterpedia「Meruem」。薔薇後のメルエムがプフ由来の能力と自身の円を組み合わせ、光子のような微粒子としてオーラを展開する能力が説明されている。https://hunterxhunter.fandom.com/wiki/Meruem [^8]: 日本テレビ『HUNTER×HUNTER』第126話「ゼロ×ト×ローズ」公式あらすじ。百式観音の連打でも王が無傷に近い状態で反撃へ移る流れが記載されている。https://www.ntv.co.jp/hunterhunter/story/126.html

今日これ読んで

この記事を読んだ人の次の疑問に、それぞれ答える記事です。

すべての記事から探す「行政・公的制度」の記事をもっと見る

この記事が役に立ったら、応援できます。 応援する

広告

他の記事を探す

すべての記事

めんどいちゃん

このサイトの運営者

めんどいちゃん

仕事や日常の「めんどい」を構造化して、次に動きやすくする記事を書いています。