「いい感じに進めて」「関係者で話して決めよう」と言われたまま、会議の日だけが近づくことがあります。話すべきことが多いから大変なのではありません。目的、対象者、最終判断者、担当範囲、素材の出し手、期限、品質の基準が決まっていないまま、会議で一度に埋めようとするから話が散ります。
AIを使うときの要点は、完成度の高い資料をいきなり作らせることではありません。分かっていることと分かっていないことを材料として渡し、会議で決める項目に分解させることです。
曖昧さの正体を先に見える化する
まず、依頼をきれいな文章に直そうとせず、知っていることを箇条書きで出します。たとえば、次のような動画制作を考えます。
高校生向けの会社紹介動画で、学校訪問で見せる。長さは3分。朝礼、昼休憩、仕事の流れを入れたい。技術側は設備の話を入れたい。製造側の内容は決まっておらず、リレーマラソンやロボットコンテストも候補に出ている。完成日は6月2日だが、最終確認者は不明。
この段階では、動画の良し悪しを評価する必要はありません。AIに、決まっている前提、未確定事項、候補にすぎない内容、判断者が不明な点を分けさせます。期限だけが確定していて中身が未確定なら、それも重要な前提として残します。
AIに作らせる出力を決定事項に寄せる
会議準備で有用なのは、抽象的な「良い案」ではなく、次の会話にそのまま使える部品です。
- 現時点で決まっていること
- 未確定事項と、誰に確認するか
- 今日の会議で決めること
- 話す順番と開始時のセリフ
- 参加者ごとの確認内容
- 想定される反応と返答
- 会議後に送る確認メモ
特に、会議で確認すべきことは5つ程度に絞ると扱いやすくなります。動画例なら、方向性、必ず入れる内容、各部署が用意する素材、最終確認者、素材送付期限と修正期限が中心です。AIの提案は決定ではないため、実際の権限を持つ人と照合して使います。
4枚のスライドで話を流さない
口頭だけで進めると、新しい候補が出るたびに論点が横へ広がります。簡単な画面共有資料を先に用意し、会話を確認項目へ戻せるようにします。
1枚目は本日の確認事項。動画の方向性、必須内容、部署ごとの素材、最終確認者、送付・修正期限を置きます。2枚目は対象者、使用場面、尺、想定内容、未確定事項です。3枚目には構成案を置き、たとえば0:00〜0:15を外観とタイトル、0:15〜0:40を朝礼、0:40〜1:20を製造現場、1:20〜1:50を技術・設備、1:50〜2:10を昼休憩、2:10〜2:40を午後の仕事、2:40〜3:00を締めと社内活動紹介にします。4枚目は、最終確認者、素材担当、素材期限、修正期限など、会議で確定させる項目です。
構成案は完成版ではなく、抜けや重複を見つけるたたき台です。リレーマラソンやロボットコンテストを入れるかどうかも、誰に向けて何を伝える動画なのかという目的に照らして決めます。
そのまま使える依頼文にする
AIには、次のように役割と条件を明示します。
以下のふわっとした依頼について、会議前の準備をしてください。
1. 決まっていることを整理
2. 未確定事項を一覧化
3. 会議で確認することを5つに絞る
4. 開始時に読むセリフを作る
5. 誰に何を聞くか順番を作る
6. 想定反応と返答を作る
7. 会議後の確認メモ案を作る
条件:責める言い方にしない。責任を無限に背負わない。期限内に現実的な範囲へ落とす。最終確認者、素材担当、期限を必ず確認する。
出力を受け取ったら、事実と推測を見比べ、会議で決める項目だけをスライドに残します。会議後は、決まった内容、担当者、素材の期限、修正期限、次の確認者を短いメモで送り、口頭で増えた話を再び曖昧な状態へ戻さないようにします。
AI会議準備の価値は、会話を上手に見せることではありません。曖昧な依頼の中から、誰が何をいつまでに決めるのかを先に取り出し、会議を判断の場に変えることです。

